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今日はヤン・シュヴァンクマイエルの映像作品を二本連続してみました。『アリス』と『オテサーネク』。

『アリス』はいわずと知れた『不思議の国のアリス』の映像作品なんですけれども、これはかなり良かった。アリスがひたすら玩具たちの住む世界(これがいかにも狭苦しい館の中なのだ)をさまようという話なんですが、アリスも玩具たちもちっとも可愛くない。このアリス役の女の子(どこか天野可淡の人形に似ている)が、まったく笑わないし、笑ってもちっとも可愛くない。ひたすら生真面目な顔で悪夢の世界をさまよい続け、わりと残酷なことも平気でやる。こういう幼女アリス像ってのは新鮮です。
剥製の兎である時計兎、骨格標本をでたらめに組み合わせたような姿の動物たち、まるで安物の人形にしかみえない小型化したアリス、そして、ひとつの館の中をさまよい続けるという理不尽なシチュエーション。
一言で言うと『子供の悪夢』。私もなんかこういう夢を見たことがある、という不思議な既視感に駆られながらみてました。
魅力的とは言いがたい奇妙な登場人物たち。パンからは錆びた釘が生え、ジャムには画鋲の入っている奇妙な世界観。
でも、全体的にただようグロテスクな空気が、ある意味とても『アリスらしい』。これは掘り出し物だったかも。

『オテサーテク』はチェコの民話を下敷きにしたという作品。なんか理不尽な幻想映画というか、ホラーなんだろうか、これは……
子供が欲しいが恵まれない夫婦、ある日、夫が赤ん坊に似た形の根っこを掘り出して、ちょっとしたいたずら心から妻にプレゼントしたところ、妻はその人形に異常な執着心を抱くようになる。そして、その木人形を子供として認めさせるために十月十日の妊娠期間まで演出すると、なんと、木人形が本当に命を持ってしまう。けれど、その人形は異常な食欲を見せ始め…… という話。
オテサーネクが動き始めるまではなんというかちょっとサイコなだけの映画って感じだったんですが、オテサーネクが根の手足を振り回し、不気味な歯や舌を見せて異常な食欲を見せ、ついには猫を食い、人間まで餌食にするに至って、なんともいえない不気味なホラーの様相を見せ始めます。
で、オテサーネクの動作が、人形アニメなのでまた不気味にぎこちないんだわ。
この特撮的な違和感がまた独特の味をかもし出していて、寓話の中の存在が現実に現れてしまったかのような異常さを現していて素敵な感じ。
オテサーネク、木の根っこが人間型になったような化物なんですが、口の部分の節穴から歯や舌が見えたり、稀に眼球が覗いたりするのがなんとも不気味。これ、特撮ホラー映画というくくりにしてみたらどういう評価になるんだろうか。

でも、二本しか見て無いんでなんともいえないですけど、シュヴァンクマイエルってどうしてあんなに『口』にこだわるのか……
ものを食べてるカットが異常に多く、また、唇のアップがとても多い。アリスの赤い唇はストーリーを語り、インクで汚れた指を舐め、クッキーを齧る。オテサーネクでもモノを食べているシーンは異常に多いです。上の説明からはずれたけど、話の中で重要な役目を果たす少女がいるんですが、彼女はいつもモノを食べています。
エロティックというよりも、むしろグロテスクな現象として強調される『唇』。唇ってのは内臓の露出部分なんだよなぁ…… となんとなく思いました。
シュヴァンクマイエル面白い(笑) 『アリス』はもっかい見たいけどもう帰しちゃうらしいからちょっと無理。次はまたなんか借りてこようっと。
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