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わたなべまさこ『聖ロザリンド』を漫画文庫にて入手。うわさには聞いていたが…うわあ、これはすごい。
このお話は、まるで天使のように愛らしく、信心深い少女ロザリンドのお話。彼女はママのことが大好きな8歳の女の子。「嘘をつくのはいけないこと」というママの教えを守り、人に優しく、甘えん坊。
でも、ロザリンドは、たったひとつ、呪われた運命を持っていたのです。
人を殺すことにまったく禁忌を憶えない、という倫理観の壊れと、8歳の少女という非力な立場に置いて残虐極まりない殺人行為をおこなう《殺人の才能》…
この話はロザリンドが最初の殺人をおかしてから、最終的に実父の手によって葬り去られるまでの殺人記録って感じですが、話の設定として、ロザリンドには二つの特徴があたえられてます。
天使のような無垢さと、本能のままに殺人を繰り返す《呪われた血》の二つです。
ロザリンドの《呪われた血》に関しては、彼女の祖先に同じく16歳でギロチン刑にかけられた連続殺人鬼の少女がいたということになっています。これは現在だとあんまり採用されないぽい設定だなー(苦笑 でも、その結果、ロザリンドが殺しを繰り返す《理由》が存在しないのですね。彼女はやさしい両親にこよなく愛されて育っており、また、途中でロザリンドと心中を図ろうとして自分だけ死んでしまう母親のことを、中盤以降のロザリンドは、一途に探し続けます。
面白かったのが、ロザリンドの犯行を知った大人たちは、大半、「こんなかわいらしい、あどけない、天使のような子がそんな恐ろしいことをするなんて」という反応を示したってことです。実際、ロザリンドを抹殺しようとし、最終的にどっちも死んでしまう(たぶん父も死んでるだろうなあ)両親も、ロザリンドの罪深さおそろしさにおののきながらも、最後まで「娘への愛」を貫きます。
これ… もしも今の時流で書いたら、ロザリンドはこんなに幸福(?)な運命はたどれないだろうなー、と思いました。
この作品だとロザリンドへの深い愛と、罪深さへの恐ろしさの間で懊悩する父親にたいしても回りは同情的だし、最終的にはロザリンドと心中するために真冬のアルプスへと消えて行く二人を見送りすらします。
今だと「子どもが歪むのは親の教育が原因」「親は子どもの行動に責任を取るべき」「どれほど幼い子どもであっても罪をまぬがれることはできない」っていう考え方が一般的ですから、ロザリンドは途中で殺されてしまうのではないかしら…と思いました。
天使のような姿と、悪魔のような心を持つ子どもの殺人鬼、って、考えてみると、《MONSTER》のヨハン・リーベルトもいましたね。彼と比較してみると、ロザリンドの特徴がわかる気がする。
ロザリンド:愛情深い両親の養育・恵まれた環境・血統による殺人衝動・周囲の人間からの同情的なあつかい(呪われた血を持ってしまった可哀想な子)
ヨハン:双子の妹はいるが父は不在、母にはほぼ棄てられている・実験施設による養育・本来のものか教育の結果か分からない殺人示唆・周囲の人間からの畏怖と嫌悪(天使の皮を被ったモンスター)
…なんかこう、あきらかにヨハンのほうが可哀想なあつかい(苦笑 でも、今の時流はこっちなんだよなぁ。
ちなみにロザリンドは8歳にして21人を殺し、「この子が大人になったとき、己の罪をしってどれだけ苦しむことか」という配慮により、父によって深い雪のなかへと葬り去られました。最期までロザリンドには愛にみちた養育者が存在したわけですね。その分、彼女の救いようのなさが強調されるわけですが。
ロザリンドは《死の天使》だったわけですが、どこまでいっても《アウトサイダー》とはならなかったわけです。そこらへんの比較と、世間での少年犯罪にたいする見方の違いとかをならべて考えると面白いかもですね。
ちなみにロザリンドが殺しを繰り返す狡猾さは、ふつーに怖いです(笑
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