オリジナルサイト日記
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『ぼくらの』というのはすごく欝な設定のアニメらしいですね。
実物を見たことはないのですが、主題歌、『アンインストール』を入手。繰り返し聞いております。
”アンインストール この星の無数の塵のひとつだと いまのぼくには理解できない”
恐れを知らない戦士のように振舞うしかない アンインストール”
数ヶ月前のSFマガジンに、なんとなく、心にすごくひっかかる評論があったので、それについて。
今の世の中には(それは現実かどうかはおいておいて)、ものすごくサバイバル感ってのがある、っていう話です。そして、いわゆる『セカイ系』はすでに時代遅れになっていて、今、もっとも最前線にある感覚ってのは『サバイバル系』だと。
例としてあげられていたのは、『デスノート』と、『コードギアス』、『バトルロワイアル』でした。
前者2作は、有能で傲慢な主人公が、革命家として世界の変革を求める話。でも、作中だと彼らの人格には不完全で稚拙な部分がある、ということが指摘されているとその文は続けます。つまり、「殺される前に殺す」という論理は不完全であり、決して正しい解答ではない。でも、最後に若年層から圧倒的な支持を得た『バトルロワイヤル』を入れると、話がとたんに変質します。
もう10年も前、90年代の末に、『平坦な戦場でぼくらが生き残るということ』、という言葉がありました。
なんていうのか、つまり、どこまでもフラットに続いていく『世界の終わり』。映画が終わった後に流れるつまらないホワイトノイズのような世界。そこで、自分自身を見失うことなく、心を失うことなくサバイバルをしていくためにはどうすればいいのか…… そんな話。
でも、今の『リアル』は、そんな問いかけを許すほど、生ぬるくなくなってきている。
『平坦な戦場』を90年代のリアルだとしたら、00年代のリアルは、『今から殺しあいをしてもらいます』でしょうか。「ぼくってなんなんだろう」などと問いかけている暇があるか? そうやって立ち止まっているやつなんてさっさと撃ち殺せ! あいつを消さないとぼくが、あるいはぼくの大事な誰かが消される。そうやってAKを握り締めてサバイバルをしなければいけない。
こういう世界だと、『弱い』というのは、悪以外の何者でもありません。
闘う力を持たない、闘う意思を持たないものは、敏感にそれを感じ取ります。丸腰で戦場に放り出された彼らは、とにかく、必死で逃げ惑う以外に方法を持ちません。周りの人間がすべて敵だったなら、徒手空拳の自分が、どうやって生き残れるか? 必死で逃げ、隠れ、息を殺して嵐が過ぎるのを待つしかない。いつ過ぎるか分からない嵐を? いつ見つかるかも分からないのに?
……でも、だからって、外に出て行ってそれを問いかけるというのは愚かなことです。だって、相手は銃を持っている。見つかった瞬間に、自分は、撃ち殺されてしまう。
戦いをやめさせたいですか? どうやって? ガンジーみたいに武器を持たずに行進しますか? たぶんクレイモア地雷で爆破されるのがオチでしょうね。戦いをやめさせたいなら、大事な人を守りたいなら、もっと強くならないといけない。もっと強く、もっと、もっと。自分に逆らうもの、『悪』であるものたちをすべて従えて、己の圧倒的な力の前に屈服させないといけない。それが始めて、世界を平和にするたったひとつの道。
……あなたは、そこまでの力を持ち、他の『正義』を掲げた人々と、戦い続ける力がありますか?
無いのなら、あなたは死ぬでしょう。死ねば、結局ほかの『弱い』人々と同じです。鉛玉を脳天にぶちまけられ、脳漿をまきちらして死ぬならまだましでしょう。穴だらけになってもまだ死ねず、這いずり回って必死で彷徨った末に、苦痛と絶望の中で終わるかもしれない。
『ブラックラグーン』とかも、なんとなく、これと似た匂いを感じますけどね……
殺さないと殺される。だから殺す。相手がこちらを殺そうとする前に殺す。理由は何も無いのです。「相手が私を殺そうとするから」 それだけが、戦う理由です。
”あの時最高のリアルが向こうから会いに来たのは
僕らの存在はこんなにも単純だと笑いにきたんだ”
最高のリアル、それは『生』と『死』。
人間が体験しうる極限のリアリティ。そして人間にとって、最も強力になりうる欲望というのは、『死にたくない』でしょう。セックスするのも、ものを食べるのも、呼吸をするのも、眼が見えるのも音が聞こえるのも、すべてを還元すれば『体』を生かすため。それ以外に理由は無い。
生をも凌駕する誇りを得たものは、あるいは生を維持するのが不可能なほどの苦痛を得たものは、もしかしたら、『ただ生きるよりもさらによく生きるため』に、命を引き換えにする方法を見出すかもしれません。
でも、人間は呼吸する。心臓を動かす。血液を循環させている。生きるために。
―――すべての幻想を否定した末に出てきた真実の『リアル』ってのは、ずいぶんと単純です。
自分は無力でちっぽけで、誰かが殺そうと思えば簡単に殺されてしまう。
たった一本のロープで、包丁で、一台の車で、ホームから背中を突飛ばす手で、あるいはデパートでも購入できるようなシンプルな毒物で、死んでしまう。
「側にいるだれかが自分を殺そうとしない」という最低限の安心感が、社会を成り立たせる最低限の契約です。
これさえ奪われたとき、あとには何が残るのか…… 今後が楽しみであります。
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