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水仙、というと、『ナルシシズム』の語源ともなった、美少年ナルシスの寓話で有名な花でございます。
ナルシスは最高の美を与えられた少年であり、多くの女たち、果てはニンフたちまでもが、彼に恋をしました。けれど彼はすべてを拒み続け、ついには彼に恋焦がれたはて、エコーという名のニンフなどは、声だけを残して消滅してしまいます。
それを見て、ナルシスの傲慢な愛を嫌ったとある神が、クピドに命じ、ナルシスへと呪いの矢を放たせました。その呪いの名は叶わぬ恋。ナルシスは、水鏡に映った己の姿への、叶わぬ恋情という呪いを受けてしまったのです。
その結果、ひがな、言葉を交わすことも、抱き合うことも出来ない虚像を見つめ続けたナルシスは、ついには水へと落ちて死に、水辺に咲く清楚な花となって、ひとつの教訓を残しました。
すなわち、己自身のみを愛するという狭量な孤独は、ついには、死を招くのだ、という教訓を。

でも、このお話には、マイナーな異伝が存在するということは、あまり知られていないようです。
すなわち、ナルシスには、己と瓜二つの姿をした、名も知られぬ、双子の妹がいた―――
けれど妹と死に別れたナルシスは、嘆きの余り、亡き妹の面影を水鏡に求めて、死にいたったのだ、と。



『水仙花』というゲームを、現在プレイ中です。
発行はビジュアルアーツ、05年発行。音楽・作曲がさっぽろももこさん。一部でカルト的な人気を誇るゲーム、『さよならを教えて』でその存在を知ったサウンドプロデューサーさんです。
お話が場面ごとにチャート分岐して、あたらしいアイテムを手に入れると次へいける、っていう展開が奇抜にしてめんどくさい。でも、一番最初に『トゥルーエンド』と名づけられた一つのシナリオを見たら、そんなめんどくささもぶっとびました。
前評判どおりのメタゲーです。このシステムもきちんと生きてる。面白い!
物語は、すべて、冒頭の言葉どおりに進むといっても過言は無いでしょう。引用します。


主人公、光一。

財閥、大柳一族の青年当主である彼は、
全てを手にするが故の空虚で怠惰な毎日を過ごしていた。

しかし、そんな彼の無色人生は、ヒロインとの出会いにより、有色に彩られる。

始まる、官能の毎日。
昼夜、場所、問わず構わず行われる交わり。
望む――ただ、それだけで。

そんなポルノにさえ、きょう日祝福は与えられる。

果てに待つのは「ヒロイン」との「永遠」の「約束」に裏打ちされた「真愛」を得ての「大団円」

そう、終劇は拍手と喝采に祝福される。
その姿がどうあれ、もっともらしい自己陶酔の納得によって。

その、はずだった。
けれど、渦巻く謀略はそれを良しとしなかった。
そして、新たに姿を現した物語は――

――狂っていた。
――とても狂っていた。
――どうしようもなく狂っていた。
――狂いきっていた。

そう、少年少女は立ち上がり、「愛と感動の物語」に反旗を翻したのだ。
自らの幸せを得るために。
もう二度と、不幸の繰り返される事の無いようにと願って。

これはそのまま引用です。これだけでも、魅力的で、メタフィクション好きにはたまらない。
ついで、付属冊子についてきている文句も、刺激的なものばかりで、バシバシツボを付いてきます。

『エロゲー、お好きですか?
 でしたら、お勧めいたします。

 変り種、お好きですか?
 でしたら、お勧めいたします。

 愛に奇跡に約束に、
 少年少女が殺されて、
 そのいたいけな様に
 涙する、拍手する、喝采する。
 ―――お好きですか?
 でしたら、お勧めいたしません。

 世界、壊れてほしいですか?
 ひっそりと消え去りたいですか?
 ねえ?
 生きること、許せますか?』

『愛と怒りと / 死と希望と
 哀しみの / 感動の
 悲劇的 / ザ・公開
 ストーリー / 自慰ショー』

いまんところ遊んでる感じだと、不思議と、『グラン・ヴァカンス』に似たものを感じます。
すなわち、これは舞台裏の物語。美しい舞台の上で繰り広げられる、典雅な、清冽な、感動的な物語のその裏で、美しいヒーローとヒロインの純愛の物語の下、踵下に累々と積み重ねられた、犠牲者たちの怨嗟のモノローグ… って感じか。
とりあえず、冒頭でいきなり度肝を抜かれたのが、『ヒロイン』が、男の子だってこと… 『少年』と書いて『ヒロイン』と読む。なんという力技。
でも、パッケージを見ると、そこにはヒロインであるところの天内衛くんの他にもうひとり、可憐な美少女さながらの少年が、描かれているのですよねえ。髪の色が違う以外は衛くんに瓜二つ。
そうして、タイトルが『水仙花』であるってあたりが、なんとなく、生きてきます。

作中でばらまかれるフレーズは、なんとも断片的なものばっかりで、まだまだ真相は分からないのですが、たくさんの『純愛の物語』へとつばを吐きかけるような言葉の羅列には、なんとも刺激的なものを感じます。

まあ、まだプレイ途中なので、そのうち続きを。
―――まあひとまず、テキストは雅文調で美しいですが、正直、ぜんぜんエロくはないです。(きっぱり)
でも声優さんたちの、いかにも演劇的な、独特の台詞回しが、慣れると癖になってきますねー。とりあえず御門お姉様と小夜の二人に萌え。そして、なんともあざといBGMが素敵。『グラン・ヴァカンス』になりますが、いかにもノスタルジックな押し付けをたっぷりと塗りこめた、という偽古典風の雰囲気が作品にあってます。

現在、二次創作をやりながら、『文章上に存在する、擬似コンピューターウイルスとしての版権キャラクター』って概念について考えているのですが、なんだか参考になりそうな雰囲気です。
あんまりメタフィクショナルなものを二次で書くのもどうにかって感じですが、楽しみではあります。
拍手、罵声、冷笑、罵詈雑言、無視。

……うーん、名作。

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