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私にとって記念的なアンソロである《書物の王国》シリーズの一冊、《鉱物》に入ってる『青色夢硝子』の作者が、『ゴシック・ハート』以来個人的におっかけてる高原英理氏らしい知ってびっくらこきました。
ちょ! 編者が自作をアンソロに入れていいのかよ! しかもヒミツで!!(笑

高原英理氏の評論は、『無垢の力』『少女表層論』がむちゃくちゃ面白いです。どこまで妥当かは外の人間には分からないのですが、「無垢な存在を愛することによって己の汚れを排除する」という少女崇拝文脈と、さらに「その文脈は最終的には少女そのものを救わない」というあたりまで切り込んでくれてるのが読んでて面白かったです。そういや今月のSFマガジンにも似たような話が載ってたよーなー。
『ゴシック・ハート』においては楳図かずおの『あかんぼう少女』と岡崎京子の『ヘルタースケルター』を羅列して、「選ばれなかったものたちの行く末」を語っているのがものすごく面白かったです。高野英理氏のアウトサイダー論は何かすごくしっくりしてて面白い。ただし、社会変革の方向には絶対に向かない感じをなんとなく感じていたのですが(時代的に羅列しちゃダメだけど『殺される側の論理』とかさ)、作家だからなのかなと思うとなんとなく納得する感じがします。
社会の矛盾とかに対して、そこで変革のための力と旗を振りかざすタイプは、いっちゃあ悪いが… 評論家、政治家、活動家としては絶対に必要な資質だと思うけれども、作家としてはどうしても二流感が付きまとう気がするのです。あくまで幻想ホラー系の作品としてね!!
そういう現実の矛盾残酷さどうしようもなさをえぐりぬいて、さらに、そのどうしようもなさを踏み台、あるいはばねにして、彼岸への飛翔を果たす能力ってのが、幻想系ホラー系作家には必要な素質という気がするのですよね。そこで現実を完全に振り捨ててるから彼は生活者としては失格になるわけですが、でも、そういう想像力が無い人ってのは、やっぱり、すばらしい『幻想』は描けないと思うのです。ファンタジーは逃避文学・負け犬文学であるべきだと思う。いい意味でですが。

「まちがってこの世に生れ落ちてしまった」っていう感覚は、中井英夫の作品? かどっかに書いてあったことだと思うのですけれども、メジャーにはどうしたってなれないが、独特の異様な美を持ちうる力になるよなーと思います。
なにをどうやったってまちがってる。ちぐはぐしてて、努力しても、頑張っても、絶対にこの世の住人にはなれない。
人魚が人間の子どもとして育てられることになって、「人間になりたい」と思って下半身を切り落としてしまったら、なにがなんだかわからないことになるみたく(笑) 世界そのものから否定されている… っていう感覚は強固なユートピア幻想もしくはディストピア幻想を作り出すのに必要なんじゃないかしら、とちょっと思ってみます。
でもまあ、これってある程度年を食って、まして、作家として成功して「居場所」が出来ちゃったら、維持しにくいような気もしますけれども…… やっぱ監獄とかにぶちこまれてそこで書くしかないのかしら…… 難しいものですねぇ。

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ダイアン・アーバスの写真集を借りてきましたよ!
フリークスの写真で有名なダイアン・アーバスですけれども、そんなにそういう内容は多く無かったです。というよりもむしろ、60~70年代のアメリカン・カルチャーの普段眼にしないような部分が見えて面白かったです。ヒッピーのアメリカ、ベトナム戦争の悪夢をひきずってたアメリカ、ヌーディストのアメリカ……
そして、冒頭のアーバスのインタビューには、けっこう有名な言葉がいっぱい見つかって面白かったのですが、個人的にむちゃくちゃぐっときた部分があったのでメモ。書かないと忘れるもの。(笑

《ダイアン・アーバス作品集 冒頭インタビューより》

"そして私をこのパーティに連れてきてくれた女性が一人の男の人を指してこう言いました。「あの男を見て。彼は踊りたくて踊りたくてどうしようもないのに、怖くてたまらないのよ」"

"彼は見かけはただのあたりまえの60歳の老人だったのです。私たちは踊り始めました。彼はとても恥かしがりやで、まるで11歳で成長が止まってしまったかのようでした。どこに住んでいるのかと尋ねると、彼は80歳になる父親とコニーアイランドに住んでいると言いました。働いているのかときくと、夏の間だけビーチでアイスキャンディーを売っていると答えました。"

"「ぼくはずうっと心配しつづけて」 とてもゆっくりとした話しぶりでした。「ぼくはこんなままでいいんだろうかと心配しつづけて。何にも知らないし。でも、もう―――」 そして彼の瞳がキラリと光りました。"

"「もう絶対に心配なんてしないや」"

……なんていうか、これを書く写真家がいるってことも、これが評価されてたってことも、すごいですね。
フリークスっていうんだったら、ジョエル・ピーター・ウィトキンとかのほうがいいんじゃないかしらとちょっと推測。ウィトキンはあんまりしっかりした写真集をみたことがないですけれども、数少ないスナップだけでも、なんていうか、すごく作為的な、美しい写真を取りますから。アーバスはなんていうかすごく無造作です。無造作すぎるって言うか。
でも、このざらざらした感じ、いいなぁ。特にアーバスの撮る性転換者・女装者の写真がものすごくいいです。そりのこした眉や、たるんだ肌、肉の上に浮き出る骨の形、さらには精気の無い表情の生々しさがすごい。あとは老人を撮るときの、この、なんの情け容赦もない、身も蓋も無い視点がすてき。
押さえておくべき作品だったなあと思って幸せです。


”文学少女と慟哭の巡礼者”を読みました。
ひょんなきっかけから購入し始めてた文学少女シリーズですが、とうとう核心に置かれていた”美羽”の登場により、クライマックス級の盛り上がりを迎えたと思います。全作、”穢名の天使”は「ん~?」って感じだったのですが、今回はほんとうにゾクゾクしました。アマゾンの言うとおり、五つ星の名作。ライトノベルって舐められないなぁーと思わせる力量がすごい。

以下ネタバレ。

かつて、”井上ミウ”というペンネームを名乗り、少女作家として新人賞をとってしまったことから、当時あこがれていた美羽という少女を失ってしまった… というトラウマを負った井上心葉を中心にめぐる、自分の弱さも、他人の醜さも許せない、透明で硬く、もろい心を持つ少年少女の青春物語。
どの作品も古典の名作文学をテーマにおいているというのが、読書中毒としてはキュンとくるところ(笑) で、第一作の『”文学少女”と死にたがりの道化』以来、追いかけていたのですが、やっと物語が主人公である井上心葉くんにたどりついたというのに、ちょっと感慨深いものがあります。
このシリーズの登場人物は、みんな、心に後悔の傷をおった少年少女ばかり。で、彼らが自らの傷へと向き合い、己を嫌悪し、時に自己破壊の衝動に駆られ、でも、最終的には”文学少女”たる天野遠子のやさしい推理によって、なんとか、自分の立つべきところへと戻ってくる。……ってのが、一般的なプロットですね。
そして、このお話に出てくる少年少女の”傷”ってのが、なんか、いかにも思春期の少年少女らしい潔癖さによって、ガラスのような透明な輝きと、骨をも切るような鋭さを併せ持っているというのが、すごく魅力的。

私が一押しなのは、一巻で登場した竹田千愛ちゃん…… 『人間失格』の主人公になぞらえて語られた女の子です。
見た目はいかにもきゃぴきゃぴしていて、砂糖菓子みたいに愛らしくて小さく、なんにも悩みがないような風の千愛ちゃん。でも、彼女は『人間失格』を地で行く無感動さ、冷淡さに侵された心の持ち主で、本当は誰のことも愛せないし、人と同じように喜んだり哀しんだりできない自分に、身を切るような痛みを感じている。
一巻で、かろうじて”生きる”という結論を出した千愛ちゃんですが、彼女の痛みは癒えてはいない。主人公である心葉や、遠子先輩をはじめとして、自分のことを大切にしてくれる人々との出会いを得ることができても、まだ、彼ら彼女らを”愛する”ことができない自分を心から厭う気持ちに苦しめられている。
そんな千愛ちゃんが、今回、とても重要な役割を果たします。
心に欠落を負った人間が、その欠落を埋める、あるいはそれを受け入れるのは、簡単なことじゃない。それを忠実に描いてくれるあたり、この作品シリーズは大好きです。

今回のヒロイン、朝倉美羽のキャラクター造形も、見事でした。こりゃあ千愛ちゃんと並ぶいいヤンデレヒロイン……(笑
主人公である心葉への独占欲と嫉妬、破壊願望と、痛いほどの憧憬。すべてが交じり合い、世の中の良識もなにもかもをすべて振り捨て、まるで魔女のように振舞う美羽の振る舞いは、中盤まで読んでいて、「ほんとにこれって無事に落ちるのか!?」というドッキドキを感じさせましたが、ラストにいたって”文学少女”があらわれたとき、物語はほのかな希望とともに結末を迎えます。
欠けたまま病んだまま、足りないまま傷ついたまま、それでも、生きていこう、という結論へとたどりつく不器用で純粋な少年少女たちは、とても愛しい。作中で書かれる絶望と瑕が深ければ深いほど、最後にほのかに差し込む希望の光の美しさが映える作品だと思います。

しかし、今回のラストの一文は、また、爆弾だよなぁー。
話が進むにつれ、日常におけるかわいらしいドジっぷり、子どもっぽさなんかを通り過ぎて、まるで、「この人は本当は人間じゃないじゃないか?」という風にすら見えてきた”文学少女”こと天野遠子先輩。
彼女の正体って、いったい、なんなんだろう……

次が最終巻かなー。番外編がはさまるとか書いてあったから、もしかしたら、短編集とかも出るかもしれないけれども。
でも、これは真面目にいい小説ですよ。すべての文学ファン、そして、青春小説ファンの方々に、オススメです。


……じゃないと、登録できないサービスを発見して、非常にあせる。

だって私、パソコンの本来のアドレス使ってないから、無料のサービスのメールしか使い方が分からないんだもん!!
そういうユーザーのことは考えてくれないんでしょうか、復刊ドットコム…… せ、せめて携帯のメールで登録したいんですけど、それもダメか!
ううううっ。
明日、サーバーに連絡しよう。


本屋で偶然手に取り、結局買わなかったんですが、衝撃的でした。
何が衝撃って、モデルが作家の嶽本野ばらだった、ということですよ。

嶽本野ばらの部屋、嶽本野ばら自身、そして、彼の生活。
嶽本野ばらといえば『ロリィタ系作家』という触れ込みもあり、私は彼の作品があまり好きじゃなかったのですが、写真として昇華された彼の姿はなるほど確かに痛々しいまでの美しさに満ちている。これは傑作かもしれませぬ。

見て、ばっと思い出したのは、『森茉莉』でした。
嶽本野ばらは森茉莉を尊敬しているから、この形容はたぶん正しいのだろうなあと思います。森茉莉の部屋がすごかったというのは今も伝えられる話だし、彼女の持ってる独特の研ぎ澄まされた美的センス、それを地上へとつなぎとめていた現実へのシニカルな目線ってものあたりに、嶽本野ばらとの共通点を感じる。

ヴィヴィアンのロッキンホースバレリーナだけが大量の並んだ玄関……
趣味的なインテリアで埋め尽くされた、決して広くは無い部屋
ロリィタ系の服を来た小柄な嶽本が町を行く姿のスナップ
骨の浮いた手足と、おしろいの浮いてしまう疲れた肌
そんな自分自身を知るように、何か、ペットショップの鳥のように悲しそうな目をし、口をつぐんだ嶽本野ばら本人

彼が美学として掲げる、徹底した『反生活』と、それをまっとうできない人間としての姿をここまであらわした作品っつーのはちょっと無いような。
年齢的には中年に差し掛かる男性が、『ロリィタ』を体現しようとしている、できないにしても精一杯に努力しているということが良く分かり、胸の詰まるような切実な感覚です。
そして、これ、装丁はミルキィ・イソベさんなのね。そしてパラボリカ・ビスで展示をしているのね。なるほど。
いろんな意味で腑に落ちる感じでした。家においておくにはちょっと悲しくて痛すぎる写真集だけど、なんか、いつか買っちゃう気がするなー。

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