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『十束町奇譚(とつかちょうきたん)』にカテゴライズされる作品は、現在、以下の通りとなっておりますー。
長編
『50円玉20枚の謎』
中篇
『狐祭りの夜』
『回想列車に乗って』
短編
『夜のブランコ』
スピンオフ? 若干関係のある話
『人喰い乃々介』
『極東武侠異聞 ~子作りしましょ☆~』
思ったより少ないなー。
カテゴライズされた作品は、すべて、『十束町』というひとつの町とそこの住人をとりあつかっております。なので、キャラクターが重複しているというか、話同士がけっこう関連性をもっている、と。
スピンオフ系は、そもそも土地が『十束町』じゃないので、もしかしたらキャラクターが出張してくるかなー、くらいの感じです。ちなみに『人喰い』は時間枠として5・6年前のエピソード、という扱いになっています。
ちなみに現在、常連決定のキャラクターは以下の通り。
日下部慈郎 23歳
交通事故によって盲目になるも、それと同時に、『相手の真実の姿を見抜く』という異能を身に付けた青年。
陽気で饒舌、そして非常にオタク的な性格の持ち主。頭の回転が非常に速いが、視覚障害者となってからが短いため、所作には不自由が付きまとう。
水島祐樹 14歳
両親が離婚し、半登校拒否状態で暮らしている少年。読書家で主に古典作品をよく読み、繊細な感性を持っているが、万事に控えめでおとなしい性格。
『人外の存在』に対しても拒否反応を示さない、ある意味とても柔軟な心の持ち主。
尾崎トミノ 14歳
半化け狐、半人間の少女。狐色に染めた髪と、ピアスだらけの耳が特徴的。口癖は『バッカみたい』。
不品行で知られており、世間からは『不良少女』と言われている。普段は祖父が経営する甘味所『いづな屋』でアルバイトをしている。
このあたりの三人がメインで、あとは、「正岡露路」「高橋洋介」「高見マリエ」「トミノの祖父」あたりが頻繁に出てくるかなー、という感じ。
あと、まだ登場していませんが、「葛城木犀」「人形師ケイジ」あたりをメインにおいた話を書いていきたいかなーと。
地理的なポイントとしては、以下が頻出。
『いづな屋』
地元密着型のちいさな甘味所。尾崎トミノの祖父がオーナーであり、トミノがよくアルバイトをしている。
地元の人間でなければ、まず、存在に気付かないような路地裏にあるが、アットホームな雰囲気と安くて美味しい甘味の数々で地元では隠れた名所。たまに人に化けた狐がこっそり来店しているらしい。
『公園』
ブランコと砂場、ジャングルジムなどのある小さな公園。
昼間は子どもたちでにぎわっているが、かつて自殺者が出たことがある、真夜中に誰も乗っていないブランコが揺れている、などという怪奇な噂の絶えない不思議スポットとなる。
実はその公園には、『名前のない子ども』がおり、ときおり、特定の条件を充たした人間に声をかけることがあるらしい……
このあたりを中心に回していきます、『十束町』。
思い切って一つのコンテンツにまとめたほうが親切ですかね? どうだろう。
ちくま文庫から出ていた猟奇文学館シリーズ三冊、やっと全巻コンプリートしました。やったー!
七北数人さんって人が編纂しているシリーズなんですが、数年前のものだったため、最後の一冊がなかなか手に入らず苦戦。でも、アマゾン様の力を借りて最終的にすべて手に入れました。『猟奇』って言葉は仰々しいけれども、すべて幻想文学やホラーの短編をあつかったアンソロジーなので、そんなにヤバい内容のものは入っていません。
いちおうタイトルを並べると、
『監禁淫楽』……監禁テーマ
『人獣怪婚』……獣姦テーマ
『人肉嗜食』……食人テーマ
の三冊となってます。
基本的には、大正から昭和にかけての文学作品からの再録なので、普通に『猟奇』って言葉から想像するようなヤバいものは無し。幻想文学系のアンソロジーで、文庫ではなく国書刊行会から出ていても不思議はなさそうな雰囲気の格調高いモノでした。でもタイトルはヤバいので、母がアマゾンでマンガを取り寄せるのにかこつけて入手するのがちょっと恥しかった。(笑
ちなみに最後に入手したのは『人肉嗜食』です。本屋で探しても絶版だったのですが、買ってあらためて読んでみると、秀作を集めているなぁーという感じ。
筒井義孝はしかしなんでこんなに食人が好きなのか。アンソロには『禁忌(タプ)』が入っているだけだったのですが、他にもかるく二・三作はそういうテーマのを書いてた気がするのですが。どのみち現実だと実行されることが少ないテーマだったので、逆にわりとストレートに食人を書いた作品が多い一巻でした。
逆に絡め手で来るのが『監禁淫楽』。なんかエロゲみたいな作品もありますが、基本、『身体を監禁するのではなく心を監禁する』ようなモノが多かった。実行可能なテーマだけに料理が難しいのか。
『人獣怪婚』は哀切な悲恋譚が多いイメージ。これは個人的なイメージですが、『沙耶の唄』とかこれに入っていてもあんまり違和感無いよね。『わがパキーネ』という作品がなんとなく似てる。
最近とは言いませんが、短編アンソロに凝りまくりです。
特にホラー・幻想文学系アンソロが素晴らしい。ジャンル意識が比較的薄い(しかしジャンル文学である)というためか、それぞれ、ホラー・ミステリ・SFなどから美味しいところをつまみ食いしている感じがたまりません。
でも、なんでこれがどこにも収録されないのかなあ、と思う作品があるのも事実……
手に入りやすい作品だと、翻訳女性ヴァンパイアアンソロ『夜の姉妹』、タイトルそのまんまの『超短編アンソロジー』、こんなアホなタイトルなのに中身はすごいよの『ひとりで夜読むな』、キラリと光る秀作のすばらしい『エロティシズム12幻想』あたりがいいです。
『ひとりで夜読むな』は、渡辺温『可哀想な姉』、瀬下耽『石榴病』、江戸川乱歩『芋虫』の全てが収録されているという、もう、化け物のように贅沢なアンソロで、一冊を読むとどっぷりと和製ホラー、由緒正しいエログロの香りに浸ることができます。
『エロティシズム12幻想』は、たしか少女愛作品の傑作、有栖川有栖「恋人」が他の作品集には収録されていなかっただろうという一点だけでも買う価値があると思います。
『夜の姉妹』は秀作が多いのですが、個人的には表題作が一押し。切なくて胸が苦しくなるような、哀しくもいとおしい女ヴァンパイアの物語です。
『超短編アンソロジー』は、原稿用紙に直して2・3枚程度の作品(へたしたら5文字という作品まである)ばかりをあつめたアンソロジー。電車の中とかで読むのに最適。それだけではなく、川上弘美『おめでとう』など、まるで小粒の金平糖を舌で転がすようにチャーミングな味わいの短編が多いです。
しっかし、世に短編のタネは尽きまじ。なんでこれがどこにも収録されてないんだろうなぁと思うような名作、かなりありますよ。
野坂昭如『骨餓身峠死人葛』が手に入らないっつーのはまず納得がいかないし、寺山修司の超短編諸作品はもっと評価されてもいいんじゃないかしらんとか思っちゃいます。ぐっと新しくなって大槻ケンヂの『キラキラと輝くもの』を、誰か、夢野久作の『瓶詰地獄』といっしょにして近親相姦アンソロジーを作ってくれないものか。
あと谷崎の初期作品、もっと読みやすい形で出してくれ! 本気で!!
……そんな私の最大のオススメ短編集は、『もの食う人々』文藝春秋編集(辺見庸じゃないよ)、ですが、これはもう基本的には入手不可能だと思うので、お勧めはしません。
でも、あれにしか入ってない最高の短編がいくつもあるんだぜ、ふふふ。岡本かの子の『家霊』なんて、私はあれではじめて読んじゃったんだぜ、ふふふふふ。
いや、だから、短編はやめられませんわー。
youtubeが相変わらず大漁です。
アンパンマソやポンキッ鬼でスパロボ
http://www.youtube.com/watch?v=IM6E6pAYtgI&NR=1
ジョジョ風味
http://www.youtube.com/watch?v=SVLrv8Q0ZpU&mode=related&search=
もいっちょジョジョ風味 キテレツのナリナリラッシュ
http://www.youtube.com/watch?v=0ZFkfl74Cto&mode=related&search=
このへんは同じサークルの作品って気がするなあ……
しかし、いわゆるネタ系サイト、ふたば系サイトのクオリティの高さには目を見張るものがあります。クリエイター意識の高さ、ネタに徹するパロディ姿勢、まさしくオタク魂!
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二人は、校舎の裏にある非常階段から、校内へと侵入した。クラスへ行くのは危ない、というドラ衛門の判断だった。折り良くというかどう言うべきか、プールからの水の噴出のせいで、校内は大騒ぎになっている。混入されたガソリンに気付いた誰かが通報したようで、消防車などが近づいてくる気配もした。
「これで安心だよね、ドラ衛門?」
屋上から見下ろしながら、ノビはほっと胸をなでおろす。
「たぶん、消防署の人がガソリンを処理してくれると思うし、もう、ぼくが見た『未来』通りになる要素は無い……」
「いや」
だが、ノビの言いかけた言葉を、ドラ衛門は無慈悲に断ち切った。
「まだ『エージェント』が残っているはずだ。また、爆発というほどの規模にはならないにしろ、学校が炎上する可能性はまだある」
「え……」
ノビは声を失う。ドラ衛門は淡々と言う。
「この時代のスプリンクラーは、炎に反応して栓がはずれ、ソレによって加圧された水が噴出するという単純な仕組みになっている」
「う、うん」
「スプリンクラーがストップしたことによって、加圧されたガソリンが飛沫する可能性はなくなった。だが、一撃目の『栓』を外した『炎』は、確かにどこかに設置されているはずだ」
「……!」
つまり、ノビが『視た』、学校の爆破には、そのスタートとなるための一種の『雷管』となる存在が仕掛けられていたということだ。
あまり大規模なものである必要は無い。まず、一つ目の『雷管』が爆発し、スプリンクラーの栓を吹き飛ばす。それによって発生した炎が次の栓を破壊し、噴出したガソリンに引火する。―――そうして、学校は、連鎖的に発生するガソリンの爆発で、炎に包まれる。
ノビにも、ようやく、事態が理解されてくる。それを見て取ったらしいドラ衛門は無感情に続ける。
「まだ配管の中にはガソリンが残っている。スプリンクラーを作動させるための爆発物が作動した場合、そのガソリンが炎上する可能性がある」
「そ、それって、大火事になるってこと!?」
ドラ衛門は、軽く、校庭のほうへと視線をやった。
「校内の退避は、既に始まっているようだ。消防隊も待機していることだし、さして大事にはなるまい」
「よかった……」
胸をなでおろすノビに、「だが」とドラ衛門は無慈悲に言った。
「『エージェント』はまだあきらめていない可能性が高い。退避した生徒の中にお前がいないことに気付けば、必然的に校内へと戻ってくる。場合によっては火災の発生をカモフラージュにして、お前を狙ってくる可能性もある」
「……!!」
「お前は、友人が炎の中に取り残されて助けを求めていた場合、どうする?」
あまりといえば、あまりの問いかけに、ノビは再び絶句する。もう、今日何度目になるか分からない。
炎の中に友人たちが、という。
自分は臆病だから逃げるかもしれない、とノビは反射的に思った。
―――だが。
思い出す。『既に体験した未来』のことを。
あのとき、ノビは、出来杉をかばうために、しず香の前に立ちふさがりはしなかったか?
その結果、『死んだ』のではないか?
「た……」
ノビは、ためらいながら、言わざるを得なかった。つま先に視線が落ちる。
「助けに、行っちゃう、かも……」
「そうか」
ドラ衛門はその答えに関して、なんら、感情的なコメントをさしはさまなかった。代わりにホルダーから短いペンのようなものを出し、ノビに手渡す。『除霊ペン』とノビが呼んだモノだった。ノビはドラ衛門を見上げる。ドラ衛門は答える。
「万が一の場合、それを使え」
「え」
「頚部でなくとも、ダメージは与えられる。部位によってはショックで気絶させることも可能だ。護身用だと思え」
「―――」
ドラ衛門は、無表情に言った。
「護衛のためにはお前から離れるわけには行かない。だが、『エージェント』を放置するわけにも行かない。必然的にお前を連れたまま、エージェントと戦いざるを得ない。無論俺は身を挺してでもお前をかばうことを最優先にするが、万が一の事態には備えておけ」
「ちょっ―――」
「So it goes.(そういうものだ)」
ノビは、まじまじと、ドラ衛門の顔を見つめた。
彼は無表情だ。はじめからそうだ。さっき見た表情は見間違いだったのだろうか。ノビは手にしたペンへと視線を落とし、それから、また、ドラ衛門を見上げた。
ぎゅっ、と『除霊ペン』を、握り締める。
「……うん」
ドラ衛門はそれを見て、小さくうなずいた。そして、身に付けていたジャケットを脱ぐ。重いジャケットをいきなりばさりとかぶせかけられて、ノビは慌てた。
「な、何!?」
「そのジャケットの生地には、対高速動体防御フィールドが組み込まれている。対ショック、防刃としての効果もある。『活性者』相手ならば気休めにしかならんかもしれん。だが、無いよりはましだ」
ドラ衛門はジャケットの下には、袖の無い黒いアンダーを着ているだけだった。首についた大きな鈴のチョーカーが目立つ。一つの無駄もなく、しなやかな筋肉に覆われた肉体が一目で分かった。肩の辺りに小さく、数字のようなものがペイントされていた。……ペイントなのだろうか。あるいはタトゥかもしれない。
ノビは我に返り、身体にのしかかるジャケットの重さにぎょっとする。慌てて反論する。
「でも、敵に向き合うのはドラ衛門なんでしょ? だったら、ぼくが着てるより、ドラ衛門が着ているほうがいいじゃないか!」
「俺は傷ついても治る。お前を守るのが俺の使命だ。ならば、優先順位はお前のほうが上だ」
当たり前のことを言っている、とでもいいたげな言い方だった。ノビは弱弱しく反論しようとする。
「で、でも、もしもドラ衛門が大怪我したら……」
思い出す。『未来』で、自分がどういう死に方をしたか。
正体不明の『手』に頚椎を粉砕されて、即死した。あの『手』がどれだけの力を持っているのかは分からないが、仮にターゲットになったなら、到底無事ではいられまい。
けれど、その事実は、ドラ衛門にも既に伝えてあったのだ。こともなげに言う。
「ロボットは壊れても戻る。人間は戻らない。So it goes.(そういうものだ)」
ドラ衛門は、断固とした口調で言った。
「俺の使命は、お前を守ることだ」
「……」
守る、守る、というけれども。
……なぜ、自分というような人間が、そこまでして守られる価値をもっているというのだろう?
ノビはためらいながら口を開きかける。けれど。
「……」
ふいに、無言でドラ衛門が立ち上がり、返事を飲み込んだ。
眼をわずかに細め、音に耳を澄ましている。やがてドラ衛門はちかくの壁に耳を当てた。何を聞いているんだろう? 戸惑うノビの前で、ドラ衛門はしばらく黙り込んでいたが。
「侵入者を発見」
ふいに呟かれる言葉に、ノビは、度肝を抜かれる。
「え…… えっ!?」
「身長…… 体重…… 運動能力…… 推測するに子どもだろう。負傷はしていない。対象を特定は出来ないが、おそらく、お前と同じくらいの年齢だ」
「し、しず香ちゃ……!?」
ノビが絶句すると同時に、ドラ衛門が立ち上がる。その巨躯に見合わぬ、まるで、体重を持たぬかのようなしなやかな動作。
「対応すべきものは二つ。『エージェント』と発火トラップ。『エージェント』の能力は、推測されるに『幻肢痛』タイプ」
ならば、とドラ衛門は短く言った。
「遠距離戦で、決着をつける」
「え」
彼の言葉はひどく淡々としていた。そして、感情を含めていない。
「お前の言葉から分析するに、おそらくその『源しず香』という少女の持っている『妄想』は、『幻肢痛』と通称されるタイプのものだ」
「げ…… げん、し……?」
ノビは頭を必死で回転させる。どこかで聞いたことがあるかもしれない。そう、たとえばテレビの健康系バラエティ番組とかで。
「それって、たしか、腕とか足とかをなくした人が、無くなったはずの場所がイタイ…… ってヤツだよね?」
「そうだ。あれと原理は似ている」
ノビは見たものを思い出す。虚空に浮かんでいた、『白い腕』を。
「『幻肢痛』の持ち主は、自分の腕や足などの器官の一部を『外部化』できる。それ以上はバリエーションが多すぎて特定はできん。だが、最悪の場合、相手は『視認できる距離』であれば、問答無用でこちらを攻撃することが出来るかもしれん」
「それって、望遠鏡とか鏡で見た場合も!?」
「So it goes.(そういうものだ)」
考えてみればひどく理不尽な話をさらりと流す。ノビは納得がいかないままに立ち上がる。立ち上がろうとして、ふと、膝が震えていることに気付く。
手が、冷たくて、気持ち悪い。
冷たいくせに、ぐっしょりと汗で濡れている。
「う……」
そうだ。
思い出した瞬間、ぐっと胃が喉までせりあがってくるように感じる。
たしかに自分は、あの『白い腕』に、殺されたのだ。
「……そ、そうだよ、ドラ衛門。あの腕……!!」
あの腕は、自分の喉に『触れた』だけだった。
にも関わらず、ほんの一秒前後の後、ノビは自分の頚椎が完全に破壊されるのを感じた。意識は暗転し、『死んだ』。
だが、そんなことがどうして可能なのだろうか?
あの腕は、何も『振りかぶり』も、『掴みかかり』もしなかった。慣性という力を得ない手が、純粋な握力だけで自分の頚椎を破壊したとでも? そんな仮定はナンセンスなような気がした。あの手は純粋に『握力』だけで攻撃していた…… だが、人間の首というものは、『重力』や『慣性』の力を借りないで、簡単に破壊されてしまうほどもろくはない。筋肉や骨組織によって何重にも保護されている器官…… それを、あの『手』は、どうやって破壊したというのだろうか。それに必要な『力』を得ないままで?
つっかかりつっかり、そういった意味合いのことを説明する間、ドラ衛門は表情一つなく、口をさしはさむこともなく、ただ、黙って話を聞いていた。
そして、やがて、口を開く。
「推測は出来る。非常に稀有な例だが、『幻肢痛』にはそういった能力を持つパターンもある―――」
そして、ドラ衛門の口にした仮定は、ノビの想像を超えたものだった。
……その言い方は正しくは無い。
呆然としているノビを置いて、ドラ衛門は屋上の端へと歩み寄る。見下ろす校庭には消防車やパトカーが駆けつけ、騒ぎは拡大しつつあるようだ。銀色の耐熱服の消防士たちがテープを張り巡らせ、校舎への立ち入りを制限し始めている。当然だろう。現在、校舎はまるごと一つの爆弾と化しているに等しい。水が加えられている分炸裂力では若干劣るが、それでも、校舎一つを火の海へ変えるのに十分なほどのポテンシャルは保たれ続けているのだから。
「どうする、ノビ」
ノビは、声をかけられて、我に返る。
「あ……」
「お前は退避するか?」
ドラ衛門の無表情な声に、ノビは、ぎょっとした。
「た、退避って!?」
「難しい選択肢だ。もしも仮に『幻肢痛』に想定しうる最悪のケースの場合、俺の側を離れることは、お前にとって致命的な結果を招きかねない。だが、俺と同行してエージェントに立ち向かうことには、当然だが、危険が付きまとう」
「……」
返事を無くす。そんなノビに、その無表情な顔も崩さぬままに、ドラ衛門は問いかけた。
「ノビ、お前はどうしたい?」
「え、そ、あの」
「お前の無事が最優先だ。好きなほうを選べ」
「―――」
ずるい。
反射的に、そう思った。
なぜそんな重大なところにきて、勝手に決断をこちらに押し付けるのだ!
「ずるいよ、ドラ衛門!! なんでそんな重要なとこだけぼくに決めさせるのっ!?」
「俺が決めたほうが良いか? ならば、俺に予想できる範囲内で、もっともお前の安全な選択肢を取るだけだ。だが、実際のところ、どちらの選択肢を選ぼうとも、お前の生存率にはさして差がない」
かりに分かれて行動した場合、もしもドラ衛門が倒されれば、ノビを守るものは存在しない。無防備なまま、刺客の前へと放り出されるだけだ。だが、もしも同行した場合、ドラ衛門はノビを守りながら戦うという重大なハンデを得る。その結果が、彼に対して、いかなる不利をもたらさないとも限らない。
そこまで考えて、ノビは、ハッとした。
だが、勝手に現れて勝手にノビを守っているこの『自称、未来から来たネコ型ロボット』は…… 実際のところ、何一つとしてノビに強要をしては居ないのだ、と不意に気付く。
ノビが、無事に。
ノビの、安全のために。
……だが、それを最優先にした結果、『他の誰か』はどうなるのだ? そんな想像が、ふいに、冷たい舌のように、背中を舐めた。
他の誰か。たとえば優。たとえばしず香。たとえば出来杉。そして……
そろり、と見上げたネコ型ロボットは、鉄面皮のまま。
「も、もしも負けたら…… どうなるの?」
「俺は完全に機能停止するまで戦い止めん。なんとしても、お前を守る」
ネコ型ロボットは、潔いというよりも、完全な無感情の決然さで、言い放った。
「それが俺の存在意義だ。So it goes.(そういうものだ)」
ぐらり、と世界が傾くような気がした。
それは、つまり。
彼は――― ノビのために、『死ぬ』と言っているのだ。
「は……あははは」
自分の空明るい笑い声が、耳障りだった。
「そんなバカなことって無いでしょ。ねえ、だってぼくたち、まだ会ってからほんの一時間くらいしか経ってないんだし……ッ!!」
けれど、ノビは、その自分の答えの中に、血管に氷水が流れるような空々しさを感じる。
なぜならノビは、見たのだ。
焼け爛れ、ガラスの破片にまみれ、火ぶくれた肌が剥けて血まみれになった無数の死体を。
そして――― 紛れも無い『殺意』というものをもって自分を見た存在のことを。
あれが『リアリティ』だとするのなら、自分のひ弱な現実逃避には紙の盾ほどの防御力も無い。もしも眼を逸らせば死ぬ。そして死ぬのは、間違いなく『自分だけ』ではない。
「ドラ、衛門」
ノビは弱弱しく眼を上げる。ドラ衛門は動かない。無機質な茶色い眼が、ノビを見下ろしている。透き通ったガラス玉の眼が。その非人間的な印象が、『瞬きの少なさ』からもたらされるものだとふいにノビは気付いた。ドラ衛門はあまり瞬きをしない。何故だろう? カチリ、と頭の中でピースがかみ合う。その冷酷な答え。
隙になるから。
相手が銃器で武装しているとき――― 『瞬きほどの間』は、致命的な隙となる。
それほどに、ドラ衛門は、『戦うためだけ』に、作られている。
決断をしなければいけない、とノビの頭の中で、何かが叫んだ。
渇いた喉に飲み込む唾液は、血とガソリンの臭いがした。
ノビは。
ノビの、答えは―――
不定例でセッションに参加してるTRPGサークル、『シダの会』にて、今日、新システム『ブレイド・オブ・アルカナ』の単発セッションに参加してまいりました!!
つっても、『ブレカナ』自体は新しいシステムでもなんでもないんですが。(笑
最近、該当のサークルのなかで流行ってるヨーと言われ、先日の誕生日にプレゼントしてもらったルールブックを手に、じゃあ、参加してみようかと行って見たのが今回のセッションでした。
……ですが、何が起こったのか、むちゃくちゃすごかった。
いろんな意味ですごかったため、一言では解説できないんですが(笑 キャラクターだけ、概要を説明しておきます。
PC1 ゼルギアス・R
過去の戦争で体の大半を自動人形に置き換えるという手術を受けた戦士。総じて物静かで冷静な印象を受けるが、戦闘時には自動人形だという特性を生かし、文字通り、体が稼動不可能限界に達するまでの獅子奮迅の戦いざまを見せる様は、まさしく、『戦神』の一言に尽きる。
過去の改造手術によって記憶を失っているが、あまり気にしていないらしい。もう20年も年を取っていないため20代後半の見た目なのにオヤジ(笑) 今回は、かつて身体に改造手術を施したドクトル・キルの依頼によって町を訪れる。
PC2 マリーヒェン
白いドレスを着た、13・4歳ほどの見た目の可憐な自動人形。ドクトル・キルの娘。
実はその身体には人間の魂をからめ取る力を持つ『命の水』が満たされており、その体内に存在する魂はかつて死した女性『ヴィルギーニア』のものであるらしい。現在はさる令嬢の下でメイドとして働いているが、その人辺りの良さ、愛らしさは実は感情制限によるものであり、後半は『悲しみ』を知ることが出来ない自らの存在性との葛藤に苦しむこととなる。
見た目は可憐な自動人形だが…… 実態は体内に『虚無』を宿した魔術兵器であり、ゼルギアスと同じく、リミッター開放時には危険きわまりない魔術兵器と化す。
PC3 カール・フォン・シュナイダー
元貴族の若き司祭。通称、『おぼっちゃん』もしくは『ヘタレ』(笑 マリーヒェンのかつての魂の器であるヴィルギーニアの恋人であったのだが、彼女の死によって心に深手を負い、世界をさまよう旅に出ている。
ヴィルギーニアの兄、ケーニッヒは妹の魂を呼び戻すために魔道に手を染めており、カールはケーニッヒの所業の罪深さと、彼自身の望みとの葛藤の間に苦しめられていた。
……が、ケーニッヒを倒した後、なぜか「ヴィルギーニア」の名前よりも「ケーニッヒ」のことばかりを懐かしがっていて、実はホモじゃないか疑惑が浮上。EDでヴィルギーニアとのつかの間の再会を果たすも、結局、疑惑は解けないままだった。(笑
落ち込んだときには実にわかりやすく飲んだくれており、そのやさぐれっぷりがラブリーで、死んだ恋人にまで心配されていた。戦闘のときだけ指揮能力のせいで強そうになるラブリーなへたれ。
PC4 ラ・トラヴィアータ (私のキャラです)
凶暴・狂犬・横暴と三拍子揃った賞金稼ぎ。とはいえ、この世界だと賞金稼ぎは治安維持の仕事もしているため、実質は警察官の一種だと思ったほうが正しい。18歳の女で魔剣使い。口調はガラッぱち、行動は乱暴だが、心根には一本の筋が通っているため、人からは信頼を寄せられるタイプ……らしい。
実は子どもだったころに誘拐され、破壊工作員として教育を受けていたため、名前・子ども時代・家族関係などを持っていない。その当時のトラウマからは、現在は開放されているように見えているが、彼女の心の闇は意外なところに派生し、町を襲う災禍と化すことになる。
PC5 ジルフェ・ジルベール
銀の髪と白い翼をもつ清廉な戦乙女。そして、『幸福の王子』におけるツバメさん(笑
町を見下ろす英雄、アン・ザ・キャシウスの魂を宿した銅像の元に留まり、彼の魂との語らいの元で、町へささやかな幸福をもたらすための使者となっている。この世界の『ヴァルフェ』は一種の魔神の使者であり、闇の眷属であるはずが、なぜ、そのような生活を選んだのかは、謎に満ちている。ひょうきんな元英雄と、クールな戦乙女の取り合わせは、何か牧歌的でもあり、一部の町の住人たちの間では、彼女の存在は「天使」として噂に上っていたらしい。(半分捏造)
最終的には物語の全てのパーツをつなぎ合わせるための使者となり、街を襲う災禍を退けるために尽力した。結果、彼女のもとに訪れた結末は悲劇的なものだったが、そのすべてを哀しみながらも凛然と受け入れた美しき翼の乙女である。
……彼女の余りの清廉さ、可憐さに、私はシナリオ途中からメロメロになり、プレイそこのけで萌えまくっていた。ダメじゃん。ジルフェはてんしなんだよ! とEDで主張したくらいだから、かなり重症。(『リルルは天使なんだよ!』と同じ言い方(ドラ映画より))
えーと、システムになれないため、戦闘がキツかったです……
ブレカナは、三つのクラス(アルカナ、と呼称される)を持ち、それぞれの技能と『奇跡』を獲得するんですが、その『奇跡』の使い方がむちゃくちゃ難しい。『奇跡』は基本的に他の手段では対抗の使用が無いほど強力なため、必然的に、「いかにして手持ちの『奇跡』を有効活用するか」が一番の問題ごととなってくる。
後半2時間くらい、ずっとラストバトルだったんですが、その内実はたったの「3ターン」だったということからも、そのややこしさが分かるでしょう(笑
結果、最後はジルフェの犠牲の元に辛くも勝利を収める、という哀しい展開のため、若干1名のPLはずっと泣きっぱなし(マリーティアのPLさん)。でも、そういう辛さがまたゲーム的なオモシロさにつながっていて、非常に緊張感のあるよいセッションでした!!
で、ブレカナは来週も、来月も続くのです。しかも来月からのはキャンペーン。(ミニだけど)
TRPGってのは、「いかにルールを把握しているか」が勝敗を納める部分が非常に大きいため、次回以降は私もキャラメイクを自分でやり、本気でがんばらないとなーと思っております。
今回のキャラは遊んでて楽しかったのですが、スペック的に不満を感じたのがやっぱり大きかったかなあ。無難に戦える戦士系を……って注文で作ってもらったため、たしかに安定した性能はあったんですが、一部に特化した特殊能力が無かったのがちょっと残念だった。
とはいえ、そういうマンチキンなキャラは自分で作れ(笑) ルールを把握してる人の自作キャラのが、やっぱり強かったし!!
というので、次回もブレカナ頑張ります。
でも、やっぱり私的には萌えが大きかった。
ジルフェさん~、ジルフェさん~、ジルフェさん~~!!
ああーもう、ヴァルキュリーがこんなに萌えるなんて知らなかったよ!! 最高でした!!(いい笑顔)