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ちくま文庫から出ていた猟奇文学館シリーズ三冊、やっと全巻コンプリートしました。やったー!
七北数人さんって人が編纂しているシリーズなんですが、数年前のものだったため、最後の一冊がなかなか手に入らず苦戦。でも、アマゾン様の力を借りて最終的にすべて手に入れました。『猟奇』って言葉は仰々しいけれども、すべて幻想文学やホラーの短編をあつかったアンソロジーなので、そんなにヤバい内容のものは入っていません。
いちおうタイトルを並べると、

『監禁淫楽』……監禁テーマ
『人獣怪婚』……獣姦テーマ
『人肉嗜食』……食人テーマ

の三冊となってます。
基本的には、大正から昭和にかけての文学作品からの再録なので、普通に『猟奇』って言葉から想像するようなヤバいものは無し。幻想文学系のアンソロジーで、文庫ではなく国書刊行会から出ていても不思議はなさそうな雰囲気の格調高いモノでした。でもタイトルはヤバいので、母がアマゾンでマンガを取り寄せるのにかこつけて入手するのがちょっと恥しかった。(笑
ちなみに最後に入手したのは『人肉嗜食』です。本屋で探しても絶版だったのですが、買ってあらためて読んでみると、秀作を集めているなぁーという感じ。
筒井義孝はしかしなんでこんなに食人が好きなのか。アンソロには『禁忌(タプ)』が入っているだけだったのですが、他にもかるく二・三作はそういうテーマのを書いてた気がするのですが。どのみち現実だと実行されることが少ないテーマだったので、逆にわりとストレートに食人を書いた作品が多い一巻でした。
逆に絡め手で来るのが『監禁淫楽』。なんかエロゲみたいな作品もありますが、基本、『身体を監禁するのではなく心を監禁する』ようなモノが多かった。実行可能なテーマだけに料理が難しいのか。
『人獣怪婚』は哀切な悲恋譚が多いイメージ。これは個人的なイメージですが、『沙耶の唄』とかこれに入っていてもあんまり違和感無いよね。『わがパキーネ』という作品がなんとなく似てる。

最近とは言いませんが、短編アンソロに凝りまくりです。
特にホラー・幻想文学系アンソロが素晴らしい。ジャンル意識が比較的薄い(しかしジャンル文学である)というためか、それぞれ、ホラー・ミステリ・SFなどから美味しいところをつまみ食いしている感じがたまりません。
でも、なんでこれがどこにも収録されないのかなあ、と思う作品があるのも事実……

手に入りやすい作品だと、翻訳女性ヴァンパイアアンソロ『夜の姉妹』、タイトルそのまんまの『超短編アンソロジー』、こんなアホなタイトルなのに中身はすごいよの『ひとりで夜読むな』、キラリと光る秀作のすばらしい『エロティシズム12幻想』あたりがいいです。

『ひとりで夜読むな』は、渡辺温『可哀想な姉』、瀬下耽『石榴病』、江戸川乱歩『芋虫』の全てが収録されているという、もう、化け物のように贅沢なアンソロで、一冊を読むとどっぷりと和製ホラー、由緒正しいエログロの香りに浸ることができます。
『エロティシズム12幻想』は、たしか少女愛作品の傑作、有栖川有栖「恋人」が他の作品集には収録されていなかっただろうという一点だけでも買う価値があると思います。
『夜の姉妹』は秀作が多いのですが、個人的には表題作が一押し。切なくて胸が苦しくなるような、哀しくもいとおしい女ヴァンパイアの物語です。
『超短編アンソロジー』は、原稿用紙に直して2・3枚程度の作品(へたしたら5文字という作品まである)ばかりをあつめたアンソロジー。電車の中とかで読むのに最適。それだけではなく、川上弘美『おめでとう』など、まるで小粒の金平糖を舌で転がすようにチャーミングな味わいの短編が多いです。

しっかし、世に短編のタネは尽きまじ。なんでこれがどこにも収録されてないんだろうなぁと思うような名作、かなりありますよ。
野坂昭如『骨餓身峠死人葛』が手に入らないっつーのはまず納得がいかないし、寺山修司の超短編諸作品はもっと評価されてもいいんじゃないかしらんとか思っちゃいます。ぐっと新しくなって大槻ケンヂの『キラキラと輝くもの』を、誰か、夢野久作の『瓶詰地獄』といっしょにして近親相姦アンソロジーを作ってくれないものか。
あと谷崎の初期作品、もっと読みやすい形で出してくれ! 本気で!!

……そんな私の最大のオススメ短編集は、『もの食う人々』文藝春秋編集(辺見庸じゃないよ)、ですが、これはもう基本的には入手不可能だと思うので、お勧めはしません。
でも、あれにしか入ってない最高の短編がいくつもあるんだぜ、ふふふ。岡本かの子の『家霊』なんて、私はあれではじめて読んじゃったんだぜ、ふふふふふ。

いや、だから、短編はやめられませんわー。
 

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