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超お久しぶりです(挨拶


タイトルどおりですが、今日本屋さんで読んだ「風の中のマリア」がとてもとても面白かったので久しぶりに日記です。清新で気高く、そして、スピード感がある。
最近なんかメソメソした小説ばかり読んでいたので、なんか、頭から冷水を浴びたようなさっぱりした気分になれました。
煽り文だと伏せられていましたが、この作品のキモはおそらく殆ど未踏であろうジャンルに正々堂々と挑んだ作者の勇気と、そこをがっちりと王道で書ききった骨太な筆力でしょう。もしも作品が気に入らなくても最後まで読めば勉強になって、一石二鳥とまではいかなくても一石一鳥はけっして逃さない。名作です。

風の中のマリア 著者: 百田尚樹 発行年月日:2009/03/03

主人公であるマリアは、《疾風のマリア》の異名を取る《アスティリアの帝国》の若き女戦士です。彼女の使命は無数の妹たちと偉大なる母を護ること。
生涯、恋をすることも子どもを持つこともない定めのマリアは、ただひたすら、己の指名のためにひたむきに、けれど、決して盲目になることなく戦い抜く生涯を遂げます。
けれど、これは実は彼女の種族の娘たちにとっては、誰にとってもあたりまえの生き様……

なぜならマリアは、オオスズメバチのワーカー(働き蜂)だからです。

オオスズメバチ、ヴァスプ・マンデリナ(本の表記と違うかも…)は、蜂の中でも最も大型で危険な種類であるスズメバチの仲間、その中でも最大の身体と最強の毒を併せ持った生き物です。土地によっては《クマバチ》って名前で呼ばれてることもありますね。
性質は肉食であり獰猛、たまにクヌギの蜜などを吸っていることもありますが基本的には肉食であり、その強力な顎と猛毒の針を持って多くの昆虫を餌食とします。ときに、ミツバチの巣や、同種であるスズメバチの仲間の巣を大挙して襲って全滅させることもあるなど、その恐ろしさは虫好きの間だと結構有名だったりもする。
実際、伝え聞いた話によりますと、時速30kmで空を飛び、ときに一刺しで人間を死に至らしめ、しかも凶暴な彼女たちが人間の住処のすぐ横にくらしている、ということが、外国人にはかなり恐怖に感じられたりもするようです。
最近だとニコニコの”オオスズメバチが現れました”という動画でも知られていたりする。

この《風の中のマリア》は、そんなオオスズメバチの巣に生まれた働き蜂で戦士蜂のマリアがヒロインの小説です。
飛行速度の速さと、熟練した狩りの技術で《疾風のマリア》の異名を取った彼女は、けれど、成虫になるとたった30日しか生きることの出来ない定めの持ち主でもあります。ですが、虫の世界の時間経過は長い。30日の中でマリアの生きる世界は大きく姿を変え、さまざまな出来事に出会うこととなりますが、マリアは最後まで勇猛果敢、同時に、ひたむきで気高い戦士であり続ける……
この話に登場する登場人物(虫??)の多くはオオスズメバチなのですが、彼女たちは基本的に皆がゲルマン系の名前を持っています。狂戦士の趣を持つ獰猛なドロテアとか、いまや伝説の存在であるはじめの娘カタリナ、名前だけ登場する異国の娘ルーネ、クライマックスでちらりと姿を見せるとある重要人物の名前はクリームヒルテだったりと、おかげで、ヴァスプの娘たちの群像劇は、さながら戦乙女たちの戦絵巻のような趣を持ち合わせています。
働き蜂ゆえに恋を知らないマリアと違い、獲物になったり敵になったりする昆虫の大半は繁殖のために短い命を燃やす普通の昆虫たちです。短い生命に恋の喜びを歌ったかと思ったら数奇な定めを追うミドリシジミ、お互いをかばいあうようにして倒れていくオンブバッタの夫婦、鬼女のような趣を持ちながらたった一匹で生き抜くことの潔さを見せ付けるカマキリのメスなど、そういう昆虫たちの姿を見ながら、ひっそりと自問自答するマリアの姿には、なんていうか…… すいません萌えました(苦笑 基本的には実際にこっちに寄ってこられたらキャーキャー言って逃げるっきゃない巨大なオオスズメバチさんなんですが、マリアという子には、戦乙女萌え属性、女戦士萌え属性をくすぐる清らかな魅力が存在しております。ハチだけどね!! どこをとっても100%、完全にハチなんだけどね!!

作中には、もちろん、はかない人生を恋に燃やす定めのオスのオオスズメバチ、オオスズメバチの天敵ニホンミツバチ、そして逆にオオスズメバチが最大の天敵であり彼女たちにとっては良いカモ(苦笑)以外の何者でもないセイヨウミツバチ、などのオオスズメバチ好きには欠かせない登場人物もあらわれております。
マリアの目から見た、ニホンミツバチのかの有名な必殺技、《蜂球》の恐ろしさはなんともいえないものです。恐れを知らない戦士であるマリアをも恐れおののかせるニホンミツバチの底力は必見。

まぁ、問題点というかなんていうかをあげるとしたら…
設定上どうしても説明しないといけないこととはいえ、オオスズメバチたち本人の口から《ゲノム》とかいう言葉が出てくると違和感があるというあたりでしょうか。このあたりは作者さんもきっと葛藤があったのだろうと思うから見ないふりをするのがきっと正解。

生きることが戦いであり、慈愛もまた戦いであり、死ぬこともまた戦いである。
普段は遠くからビクビクしながら見ているだけの相手であるオオスズメバチたちの世界は、内側から見ると、まるで北欧のサーガに表れる英雄たちの生き様のように清新にして猛々しいものです。
まるでヴァルキリーのような気高さと美しさをもったマリアの生き様は、風の中に始まり、風の中に終結します。科学的な正確さにも申し分なく、これを読めばオオスズメバチの生態についてだいたいのことはつかめるかと。女戦士萌えの人のコレクションにも、小中学校の学級文庫にもどっちもピッタリという稀有な一冊です。どうぞご一見あれv

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