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石原慎太郎の小説の主題歌ですって。
……なんだかなあ、何アホ抜かしてるんだって感じですが。
人間、長生きすれば首尾一貫しないのはあたりまえですが、石原慎太郎といえば、『太陽の季節』って印象がどうしてもあるので、自分が年取って戦争にいけなくなってから、戦争の話を礼賛するのってどうよ、と思う。
自分が銃を持って戦争にいける年の内に、そういったことを礼賛するなら分かる。話が合ってる。自分の命を賭けたいと思うのなら、それは迷惑であっても、事実、話としてはアリだと思う。
……でも、アンタ、もういいオッサンでしょう?
最近、なんか妙にセンチメンタルな戦争モノが流行ってる気がするのですけれども。
『出口のない海』とかさー。『硫黄島からの手紙』の取り上げられ方もいまいちだと思った。
前線に出て行ったひとりひとりの思惑は、まあ、いい。個人の問題だからアレコレ言いません。でも、日本は無能な上層部のせいで、どーしよーもないあほらしい戦争をやった上に、必要以上に大量の犠牲者を出したんだ、っていう事実をどう思うのよ。
戦争は汚い。そして、あくまで『政治的な』問題である、というのが最近の私のスタンスです。
最近、自分の中で新聞の国際欄を読むのがすごくオモシロいのですが、あれを見ていると、『戦争』ってのは、憎悪の問題でも、民衆の問題でもなんでもなく、『政治』のモノだっていう部分がすごく大きいなぁーと思う。
歴史ってのは政治が作るものだ。そんで、歴史があるから、『戦争』が起こる。たぶん、こういうのは地理的に不安定だった地域の人々はよく知ってるのでしょうが(『最後の授業』のアルザス地方なんか代表的)、国なんてモンは歴史的には災難以外の何者でもなかった。日本はたまたま島国で、かつ、大陸からの距離が適度だったために『国家というのは政治の産物である』ということをあんまり理解しない気がするけれども…… 歴史的に侵略戦争をほとんど体験していない上に、近代国家・先進国となってる国なんて、他にはありませんよ? 強いて言えばアメリカくらいです。
アフリカ辺りの国なんかをみると、まさしく、国家が『災厄』以外の何者でもなくなってるという事実が、存在している。
政治・法・歴史学には無知な私なんで、あまり正しいことを言ってる自身はないのだけれども、国家ってのはあくまでサービス事業なんじゃないのかなあ、と思う。
法・政・警の三つのサービスを提供する、非常に大きなサービス事業。『公僕』って言葉は非常に正しく、つまり、彼らは国民の支払ってくれる賃金のために、より良いサービスを提供することを任務としている。
でもさぁ…… その『サービス』のために人質を取られて、お前ら戦え! ってのは、どう考えても話が逆でしょう?
国の仕事が国民を守ることであり、その逆じゃない以上、「お国のために死んで来い」ってのはナンセンス以外の何者でもない。それを仕事にしている国家公務員ならイイ。でも、一般人まで戦わなきゃいけないような状態になったら、それは明らかに国が国としての機能を保ててない。
一般人が、『友を守るため』に死ぬのだったら、何故、それが『命を捨てて敵艦にアタックする』にならないといけなかったのか?
家族を連れて死ぬ気で山の中を逃げ回り、死んでも戦場へ行くまいとした人が褒められず、国に唯々諾々としたがって死した人のほうが褒められる?
なんとなく、話が逆転してる気がしますよ。
―――しかし、『特攻』にあこがれる人のキモチは、分からないでもない。
何か、自分よりも大切なものを手に入れて、それのために命を賭けられるとしたら…… 単純明快で、非常に美しい生き方です。
誰も愛せない、というのは非常に哀しいことだ。
誰からも愛されないのも無論哀しいが、『誰も愛せない』というのは、その課題よりも、さらに解決が難しい。
あくまでコレは個人的な考えなんですけれども、殺人者は被害者よりも哀しい、というようなモノです。
被害者は、あくまで、『運』で決まる。彼はむちゃくちゃ不幸であったけれども、でも、それだけです。
でも殺人者は、生涯、『人を殺すような人間』と、常に付き合わないといけない。鏡を見るといつもそこに『人を殺す人間』がいる。彼がソレを哀しいと思わないなら彼自身の人間性が悲劇だし、哀しいと思うなら生きていること事態が地獄になる。
誰からも愛されない人間は、もし、誰か…… それが恋人であっても、友人であっても、あるいは動物などであっても…… が現れて、愛してくれたなら、簡単に問題を解決できる。
でも、誰も愛せない人間は、どれだけ周りの人々に愛されても、永遠に孤独なままです。
なんか話がズレた。
まあ、そういう、『誰も愛せない』という苦悩を抱えた人ならば、『特攻』にあこがれるかもしれないな、って話ですよ!
友を愛し、家族を愛し、恋人を愛して、その『愛』が死の恐怖すら超越する…… ということは、単なる想像の上なら、非常に素晴らしいことです。単純明快です。
そこで殺される人の存在を忘れ、残される家族の悲しみを忘れ、自分自身の人生の価値さえ忘れ、それを強いた誰かは死なずに生き残るという事実を、忘れられるならね!
狂気は時に正気よりはるかに魅力的に見える。
まあ、そういう意味で、なんとなく、ここ最近のナショナリズムの流行ってのは、この世の中のアノミーっぽい状態に付け込んだ、若者の空虚感に乗じてる気がするよ、って話です。
しかもB'zがそれに乗っちゃうんだよなあ、重症だよなー、っていう気持ちです。
……特攻ソングといえば、『同期の桜』を超えるものはないヨーと思ってるユニ子からでした。
SH(サウンド・ホライズン)オンリー、参加してまいりました。
……戦果極少(がっくり)
あとで別の方々に聞いたところ、「開場して即完売のサークルが多かったですよ」とのことで、たぶん、マイナージャンルだとありがちな本のインフレが起こってたんでしょうねー。読みたい人に比して書きたい人が少ない。昔も何回か体験した状況だっただけに、納得はしました。残念なのは変わりないですが(苦笑)
あと、今回はコスプレOKのイベントだったんで、いろんな人が見られたのが嬉しかったなー。
いわゆるエリ組(アルバム・エリュシオンに出てくる5人の女の子たち)は全員いたし、他にもクロセカのロベリアとジュリエッタとか、どうやって作ったんだろう!?と思ってしまうようなゴージャスな衣装のお嬢さん方が多数でした。
あと、『仮面の男アビス』がいっぱいいた……怪しかった……
イベント後は、mixiで開催されていたサンホラオンリー後カラオケオフに参加してまいりました。
わざわざ愛知や新潟とかから来ている人も多く、サンホラ初心者としていろいろなことを教えてもらってすごく勉強になりました。あと、みなさんがいかにじまんぐ氏を愛しているかもよく分かった(笑)
カラオケ本編は…… そもそも、サンホラでカラオケが成立するっつうーのがすごかった!!
歌詞とかだとフォローされてない台詞の部分も必ず誰かが覚えているので、フォローが入ります。『黄昏の賢者』の語り部分とか暗記している方もいてものすげえ。『朝と夜の物語』だと「さあ、行っておくれ……」と誰かが言うと、全員で「ウィ、ムッシュー!」と気合入りまくり。体育会系です。お前らどこでRomanを探す気なのかと(笑)
そして、みんなでコスプレの衣装を出して、ノリノリで踊りまくる変なカラオケ。仮面の男二名、サヴァン一名、イヴェール一名。よりにもよって各アルバムの怪しい人ばっかり。
あと替え歌カラオケ『Stardast』で歌詞の《女》の部分をすべて《男》に変えるバージョンとか、むちゃくちゃ笑ってしまいました。歌ってるの男性だし。ホモの三角関係で痴情のもつれで刃傷沙汰。ひでえ歌だ。(そしてなぜかそれをゲーフェンとアルベージュで想像する私)
その後、飲み屋でサンホラトークをする人々。
「Romanの歌はどういう時間軸の順番でつながってるのか」「”聖戦と死神”は歴史的にはどのへんなのか」「『黄昏の賢者』のラストで「探したぞ、クリストフ」と言ってるのは誰なのか」というまっとうな会話から、だんだん話が横にスライドし、ギャルゲーの話とかホモの話とかで盛り上がるオタクな人々……
「ホラーが好きでギャルゲーやりたいなら、『雫』と『アトラク・ナクア』と『沙耶の唄』は絶対に押さえとけ!」と力説したら、周りの人から「ユニ子さんは絶対に女じゃない。実は男だ」と言われてしまいました。
……がんばってエレガントな服装をしていったのに!!(笑)
まあ、総じて言うと、たいへん楽しかったですよ。カラオケ久しぶりですし。
サンホラ関係の二次? っていうか、歌詞解釈の小説も書きたくなっちゃったなあ。エリ組企画とかやりたいです。昔は『Sacrifice』が一番好きだったけど、話として考えるなら『Yield』が解釈の余地が多くて面白いですね。
漫画版の『Ark』が読みたい……
学校に来ると、すでに、校庭には誰も居なくなっていた。
「……」
狭い、コンクリートで固められた校庭に、ちらちらと桜が散っている。
一瞬、フラッシュバックする。……その校庭に、まるで、熟れた苺でもつぶしたように、人間の五体が散乱している様を。
軽い吐き気とめまい。ノビは校舎へと足を向けることも出来ずに、立ち尽くす。
―――ドラ衛門は、それが『未来』に起こりうることだといった。
このまま学校へと足を踏み入れて、普通に授業を受けた場合、『あれ』とまったく同じことが起こるのだと。
あの非常識極まりない『自称ネコ型ロボット』をどの程度信頼していいのかは分からなかった。だが、ノビは、さっき見た『未来』とまったく同じ行動をとる気には、どうしてもなれなかった。
爆発、死、そして、親しい友であるはずの少女の不可解な変化。
……あれが、事実だとしたら?
頭の中に思い浮かんだものは、肺を突き刺した濃いガソリン臭と、濃密な蒸気の記憶だった。
ドラ衛門は、あれを、『スプリンクラーでガソリンを散布した結果』だと、言った。
「スプリンクラー……」
ノビは傍らを見る。プールがある。なにかかすかな記憶があった。学校に配置されているスプリンクラーは、プールと水源を同じにしているという話を聞いたことがある。
ノビはしばらくためらった。だが、やがて決心する。軽く急ぎ足に、プールへと急いだ。
季節外れのプールは、汚らしい緑色に濁っていた。フェンスで隔てられていて中には入れない。ノビはやむなくランドセルを近くへ置くと、フェンスをよじ登る。普段からあまり施錠が厳密な施設ではない。中に入るのは簡単だった。
はげかけた青いペンキ。錆びたシャワー。そして、濁ったプール。
……その水面に、何かが、浮いていた。
良く見ると、何匹ものフナだった。
それだけではない。虫のようなものが無数に浮いている。良く見て気付いた。ヤゴだった。ノビは思い出す。季節外れの時期、このプールにはボウフラの発生を防ぐためにフナが放たれる。トンボが卵を産み、ヤゴも繁殖する。けれど、それがすべて死んでいる。
「なん…… で……」
ノビはよろめくようにプールに近づき、傍らに膝を突いた。まだフナの死体は腐食していなかった。浮いたのはごく最近だと分かる。生臭い臭いは感じるが、寒さのせいか、耐え難いほどではない。緑色に濁った水面に魚の屍骸。そして、無数の虫の屍骸。わずかには花びらも浮いていて、風が吹くとかすかにゆらいだ。ノビは思わず口元を押さえる。
けれど、同時に気付いた。
水面にゆらめく、わずかな、虹色の光沢に。
「!?」
ギラギラと光る、油膜の虹色。
ノビはためらった。けれども、衝動が背後からノビを突き動かす。のろのろと指を伸ばし、油膜をすくった。鼻を近づける。……異臭が、鼻をついた。
間違いなかった。
ガソリンだった。
プールの水にはガソリンが混入している。これが、フナやヤゴの大量死の原因なのだ。
だが、どうやって? ノビはプールサイドに座り込んだまま、呆然と考える。
プールにはガソリンが浮いている。虫や魚が浮いているということは、プールにまであふれるほどのガソリンを注入したということだ。おそらくどこかの配管から漏れたものが、混入したのだろう。それだけ大量のガソリン。それは相当な手間のかかる作業だということは、何も知らないノビにも推測できた。時間も、人員も必要だ。誰にも気付かれずにそんな大掛かりな作業を行う、行える、その理由はなんだ?
『災厄』という言葉が、ふいに、脳裏に浮かんだ。
あのとき、しず香は…… しず香の中に巣食った『何者』かは、言った。
これがお前のもたらす『災厄』というものだ、と。
「ぼく、を?」
自分を、殺すためだけのために、これだけ大掛かりな仕掛けを?
体がかすかに震えだす。体が冷え切っていた。ノビは、思わず自分の身体に腕を回した。油膜の浮いた水面に、メガネをかけた少年の顔が映っていた。
「なんで…… ぼくが、何を、したっていうんだよ……」
そのときだった。
ふいに、チャイムが、鳴った。
はっとして、弾かれたように顔を上げる。
授業が始まろうとしているのだ。……ふいに、フラッシュバックする。あざやかな黄金の炎を窓から吹き上げ、数万のガラスの欠片をきらめかせながら、学校が爆破される場面が。
『夢』では、すでに、爆破が始まっている時間だ!
「ど…… どうし、よう」
何が起こるのか。どうすればいいのか。まったく分からない。そもそも誰が敵なのだ? 誰が何の目的でこんなことを始めた? それすら分からない。まして、ノビはただの子どもなのだ。対応のしようがない。警察に連絡する? 先生たちに話す? ……学校のスプリンクラーにガソリンが混入されている。学校を爆破する目的だ。そして、その犯人は自分を抹殺するために、未来からやってきた幽霊。
そんな荒唐無稽な話を、誰が信じてくれるって言うんだ!
ノビは立ち上がる。思わず駆け寄ってフェンスを掴んだ。だが、無常にチャイムは響いている。思わずノビはぎゅっと目を閉じた。これから起こる悲劇。けれども、防ぐすべが無い。仮に未来を『予見』していても、それに対策を講じることが出来なくてはどうしようもないのだ。
「どうしよう…… どうしよう。助けて、パパ、ママ、おばあちゃん、神様…… 誰でもいい、助けて……!!」
ノビは、フェンスを掴んだまま、思わず、絶叫した。
「助けて、ドラ衛門!!」
その、瞬間だった。
突然、地面が、『爆発』した。
「―――!?」
配管が、破裂したのだ。
すさまじい勢いで、水が噴射する。ガソリン交じりの水だ。強い揮発臭が鼻をついた。何が起こったのか分からない。そして、呆然とするノビの前で、何者かが、噴射する水の中から、ゆっくりと立ち上がった。
190cmを超える長躯。無骨なジャケット。そして、プラスティック・ブルーの目。こちらを振り返る。超合金モノの鉄面皮と、無機質な茶色い目。
ノビは、呆然と、呟いた。
「ドラ、衛門?」
男は、ゆっくりと、地面にあいた大穴から、這い出してきた。
軽く手を振ると、手についていたコンクリートの破片を振り払う。プラスティック・ブルーの髪がぐっしょりと濡れていた。腰が抜けて、立ち上がることも出来ないノビを見下ろす。無表情に言った。
「呼んだか、ノビ」
たしかに呼んだが。
―――地面をぶち破って登場しろとは、言っていない。
「な、な、な……」
「スプリンクラーの機能を無力化するため、加圧水槽を破壊した」
ドラ衛門は無感情に言い放つ。何か、とんでもないことを。
「ど、どういうこと?」
「この時代のスプリンクラーは、水を加圧した状態に保ち、弁の部分が破壊されたときに、その圧力で水が散布されるような設計になっている。制御弁を閉じなければ、自動的に水が止まることはない」
だが、俺には制御弁の場所が分からなかった、とドラ衛門は淡々と言う。
「したがって水圧を下げるために加圧水槽に穴を開けた。これで水圧が下がり、弁が破壊されてもガソリンの散布される量は極性となる。発火はしても爆発は起こらないだろう」
ドラ衛門は、顔に張り付く前髪を無造作によけた。同じく頭からびしょぬれになったまま、しりもちをついたノビは、呆然と問いかける。
「……ど、ドラ衛門、ぼくが居ない間に、そんなこと、してたの?」
「ああ」
「な、なんで?」
ノビの問いかけに、ドラ衛門は軽く目を細めた。不可解だ、とでも言うように。
ノビは思わず口ごもる。返事をしがたい。
「さ、さっきぼく、あんなひどいこと、言って……」
守ってくれようとしていたのに、一緒に居るほうがキケンだとか、なんとか。
けれどドラ衛門はそんなことを言ったノビのために、動き続けていた。そして、助けを求めたその瞬間に…… 非常に非常識な方法でだが…… 駆けつけてすら、くれたのだ。
顔をまっすぐに見上げられないノビに、けれどドラ衛門は、こともなげに答えた。
「俺はお前を守るために未来から来た。お前がなんと言おうと、お前を守るのが俺の存在理由だ。So it goes.(そういうものだ)」
返事が出来ないノビを見て、ドラ衛門は一瞬黙った。
……やがて、言う。
「目的遂行のため、やむなく、『付いてくるな』という命令は無視した。すまなかった」
頭を、下げる。
自分の目の前に、ガソリン交じりの水でびしょびしょになった頭を下げているドラ衛門を見て、ノビは、もう、何もいえなかった。
このヒトは――― ヒトじゃなくて自称『ネコ型ロボット』だけど―――
どれほど非常識であるにしても、間違いなく、ノビを助けようとしてくれているのだ。
その確信が、痛いほどに、胸に沁みた。
「ど、ドラ衛門、頭下げないでよ!」
ノビは慌てて彼に駆け寄る。まだ破裂した配管からは、噴水のように水が噴出し続けている。冷たい。自分なんて胸の高さにしかならないような長躯の男に、ノビは、おろおろとまとわりつく。
「分かったから! もうドラ衛門のこと迷惑って言わない! ぼくのこと守ってくれようとしてるって分かったから!」
「そうか」
「うん。……その、ありがとう、ドラ衛門」
ノビが言うのに、ドラ衛門の表情が変わった。
瞬間、無表情が、崩れた。
―――不思議そうな、顔。
気付いたノビは、たじろいだ。
「……どうしたの?」
「それは…… いや」
言いかけたところで、ドラ衛門は、言葉を切った。目を上げる。プールの配管が爆発したのを見て、驚いたらしい教職員たちが、ばたばたとこちらへとやってくるところだったのだ。
「ひとまず退避するぞ。つかまれ」
「う、うん」
ドラ衛門はノビを抱き上げる。片腕だけで。あまりの怪力にノビは目を見張ったが、とにかくは横においておいて、首の辺りにしがみつく。濡れた髪が冷たい。ドラ衛門は近くのフェンスを掴むと、軽々と跳躍した。片腕でノビを抱いたまま、高さ2mのフェンスをこともなく飛び越える。
ノビは思わず絶句する。気付いたドラ衛門が、こともなげに言う。
「どうした?」
「なんでもないッ」
慌てて首を横に振りながら、このヒト、本当に人間じゃないんだ、とノビは半ば呆然と思った。自分はたしかに小学生だが、片手で抱えられるほど軽くは無い。そして、小学5年生を片手で抱えたまま、2mの障壁を、何の問題も無く飛び越えられる……
でも、ロボットだなんて思えない、とノビは思った。しがみついた首筋には、確かに血の通ったぬくもりを感じる。ドラ衛門はノビを抱えたまま走り出す。一目を避けるように校舎の裏へ。その顔を近くに見ながらノビは思う。
信じられない。
―――人間じゃない、なんて。
UPする予定だったドラの原稿をチェックしたところ、致命的なミスが発見されたため原稿取り下げ。UPはけっこう先になると思います。どうもすいません。
とりあえず、『眠気』は『殺意』につながるということを始めて知りました(笑
普段宵っ張りだから、やっと眠くなってきた午前4時くらい、起きてきた祖母が開けた窓から入ってきた日光が文字通り肌に『刺さった』よ……!!
人の笑い声に殺意を覚えたのも初めてです。一晩眠れなくて、やっとうとうとしはじめたところの横で、人が大声で笑っているというシチュエーションは辛いぞ。大事な祖母になんていう扱いですか私。
とりあえず明日は某様に連れられて『スピコン』に参加です。
『スピリチュアル・コンベンション』の略らしいんだけれども、この同人イベントに似ているようで非なるミョーな響きは一体なんなんだろう? 楽しみです。
ユーリウス(以下ユ)「と、言うわけで、今回は君の持っている銀剣についての解説だそうだよ、カスパール」
カスパール(以下カ)「あの、いきなり言われても意味が分からないんですが、ユーリウス様……」
ユ「いや、こちらとしても事情があるんだよ。僕たちの出演している『暗黒童話』シリーズなんだけれども、もう何ヶ月も更新がストップしているだろう?」
カ「たしかにそうですが……」
ユ「看板連載として、あるまじき事態だとは思わないかい」
カ「看板連載だったんですか!?」
ユ「だって、ほかに連載が無いだろう、このサイト」
カ「青いネコ型ロボットが活躍する話とか…… は? 割と頻繁に更新しているようですが」
ユ「『アレ』が看板連載のサイトが、オリジナル小説サイトっていえると思うの」
カ「……」
ユ「だから、てこ入れのために少し話をしようということだよ。で、そのために一番都合がいい話題が君の持っているその『銀剣』についての話題だというわけ。と、言うことで、Q&A方式で分かりやすく解説をしてみようじゃないか」
カ「……まあ、ご命令ならば。俺に分かる程度のことだったら、できるかぎり分かりやすく説明いたします」
ユ「うん、偉い偉い。じゃあ、さっそく行ってみようか」
Q:『銀剣』って何?
カ「……これは質問ですらないのでは? 『銀剣』というのは、文字通り銀で作られた剣のことです。特に刀身が、純度の高い銀で作られたものの事を言います」
ユ「うーん、それは『銀剣使い』ならではの説明の仕方だね。普通の人にはそれではわかりにくいよ」
カ「? 何故ですか?」
ユ「たとえば僕には、君の持ってる『銀剣』は、絶対に使えない。何故だと思う?」
カ「え…… っと、重いから、ですよね。『銀』は『鋼』よりも比重が高い。ユーリウス様の腕力では、剣のほうに振り回されてしまう可能性が高いでしょう」
ユ「それに『銀』は本来非常にもろい素材だ。『銀剣』は曲がりやすいし、折れやすい。せいぜい短剣程度の長さのものならともかく、君が使っている銀のバスタード・ソード並みのものになってしまったら、常人にはそもそも『武器』としての用を成さないだろう」
カ「でも、そのわりに『銀剣』は意外とよく生産されてるんですよね」
ユ「まあ、見た目が美しいからね。それに、このあたりの国々だと、『銀』は一般に神聖な金属だとして信仰を集めているから、細工の美しい銀製の剣は、儀礼用の剣としては非常に一般的なものだ」
カ「そういえば、貴族の館や教会なんかにいくと、たいていは一本は銀剣が飾られていますね」
ユ「うん。ちなみに多くの国だと、ああいう銀の剣を鍛造できるというのが、金銀細工ギルドでの公認マイスターの資格だとされている。ちなみに『この世界』での『銀剣』というのは、いわゆる『純銀』ではなく、粘りを増すためにある種の金属をあわせた合金を用いることが一般的だけれど、『ブレード・シルバー』のレシピは国ごと、工房ごとに完全な機密とされていることが多い。場合によってはプラチナを合金していることもあるというから、中世程度の文化レベルだと思うとすごいよねえ」
カ「……あの、ユーリウス様、何をおっしゃっているのですか?」
ユ「別に?(にっこり)」
Q『銀剣使い』って何?
ユ「さて、やっと本題だ。これは要するにカスパールみたいな人間のことを言う。『銀剣』を用いることができる素質を持った人間を、一般に『銀剣使い』と呼称する」
カ「別に俺は一般の人よりも腕力があって、だから、『銀剣』を振り回せているわけじゃないんです。それは必要な程度に鍛えてはいますが」
ユ「『銀剣使い』じゃない人間だったら、どんなに優れた剣士だって、『銀剣』をあつかえやしないよ。重すぎるし、そのくせもろくて折れやすい。普通の鋼の剣のがずっとマシというものだ」
カ「でも、『銀剣使い』は、一般に非常に優れた剣士であることが多いんですよね。極端な話、10代の少女の『銀剣使い』で、普通の鋼の剣を持った熟達した剣士に勝利してしまうという話もありえない話じゃありません」
ユ「うん、ここが説明の必要なポイントだね。……つまり、『銀剣使い』というのは、一言で言うと一種の『魔法使い』なんだ」
カ「魔法……ですか?」
ユ「『魔力』を持ってるという意味での魔法使いだね。たとえばカスパール、ここに、錆びたナマクラの文化包丁が一本ある」
カ「準備がいいですね……」
ユ「では、これで、この冷凍マグロを切れるかい?」
カ「じゅ、準備がいいですね…… じゃあ、やってみます。よっ、と!」
がこん!(マグロ、一刀両断)
カ「切れましたよ」
ユ「うん、これが『銀剣使い』の本領発揮って感じだね」
カ「……マグロを切ることがですか……?」
ユ「それだったら君は魚屋になるべきだと思うよ。そうじゃなくって、『銀剣使い』ってのは、『持った刃物を強化することができる』という能力を持ってるんだ、ってこと。あんまり一般的には知られてないんだけど」
カ「ああ、そういう意味ですか。なんでマグロなのかと思いました」
ユ「極端な話、『銀剣使い』はテーブル用のナイフであっても、通常の鋼のナイフ以上の貫通力、切断力を出すことが出来る。それでいて、剣が折れる・欠ける、といったことをほとんど起こさない。カスパールもあまり体験したことが無いだろう、そういうことって?」
カ「ええ、剣を持っていて、『切れない』という体験はほとんどありません。他の戦士の方なんかの話を聞いていると、戦争をしていて3・4人も切ると、剣の刃が鈍ってしまって、鉄の棒でなぐりあっているのも同じという状態になってしまうという話は聞きますけれども」
ユ「相手が盾や鎧で防御していても同じだものね」
カ「……たいていは、盾ごと、あるいは鎧ごと両断できてしまいますね」
ユ「ここが『銀剣使い』の怖いところなんだ。まあ、分かりやすく言うと、彼らの身体には一種の『電気』が通ってるようなものだね。手にした剣などの武器にも『電気』が通り、切りつけた相手を感電させることができるというわけ。ただ、この『電気』には素材との相性というものがあって、たとえば木製の武器なんかは、ほとんど威力が上がらないね」
カ「でも、やっぱり一番相性がいいのは『銀剣』ですね」
ユ「うん。『銀』は一般に『魔力』と非常に相性がいい。その上魔よけの効果がある…… というのか、通常の武器だと効果の出せないような魔物に対してもダメージを与える力を持つ。伝説に残る英雄なんかの話だと、銀の剣でドラゴンの首を一刀両断にしたなんて話もあるけど、さすがにこれは眉唾かなあ」
カ「ただ俺でも、普段使ってる刃渡り1mの銀剣があれば、馬の胴体を一刀両断にする程度のことはできますよ」
ユ「鋼の剣でやろうと思えば、いわゆる『斬馬刀』じゃないとできない芸当かな。さすがは『銀剣使い』の面目躍如という感じだね。ちなみにこの特性から、たいていの『銀剣』は刀身と柄が一体になってるタイプが多い。なのに衝撃で手がしびれて取り落としたりしないのは、やっぱり、『銀剣使い』だからなんだろうね」
カ「ちなみに銀の防具というものもあります」
ユ「これも一般の人間には重くてもろい役立たずなんだけど、『銀剣使い』が着れば無敵の鎧になる。……ただまぁ、打撃には弱いし、やっぱり重いから、せいぜいがブレスト・アーマーと兜ってのがせいぜいだろうね」
Q『銀剣の騎士』とは?
ユ「これは『銀剣使い』の別名…… っていうか、特性かなあ。国によって位置づけは違うけれども、たいていの『銀剣使い』はフリーの傭兵にでもならないかぎりコレになる」
カ「フリーの『銀剣使い』なんているんですか?」
ユ「うーん、伝承詩なんかにはときどき出てくるけど、実際には居ないんじゃないかな…… よっぽどの事情があるならまた別だろうけど。『銀剣使い』ってのは、さっき言ったような特性から、たいていの場合どっかの国に囲い込みにされるからね。なにしろ稀少な人材だから」
カ「一国に、せいぜいが……」
ユ「小国の場合、最悪一人もいない。よっぽどの大国であっても、多くても10人を超えることは滅多にない。生まれる確立は、せいぜい、数千人に一人なんじゃないかな。さらに、本人も回りも気付かずに、生涯埋もれたままの『銀剣使い』も多いだろうし。だからどこの国であっても、『銀剣使い』を見つけたら、特別待遇でエリート教育を施して、一流の騎士に仕立て上げるね」
カ「俺も地方の農村の出身ですしね。もしも『銀剣使い』じゃなかったら、地方領主の私兵になるのがせいぜいです」
ユ「うん。だから、普通は『騎士』は男性しかなれないけれど、『銀剣使い』に限っては例外と定めている国がほとんどだ。非力な女性であっても『銀剣使い』なら十分に強くなれるからね。同時に、『銀剣』を扱えるということは天恵とみなされるから、教会からも祝福されて、『聖騎士』の称号を与えられたりもする。国家においては騎士(ナイト)の称号、教会においては司祭レベルの位階と、二重の地位を持っていることが多い」
カ「とはいえ、前線に出て戦ってこその『銀剣』ですから、あんまり出世してしまうと困るんですけど……」
ユ「でも、『銀剣の騎士』を戴いている軍は、そもそも兵士の士気がぜんぜん違うからね。大軍の先頭に立ち、銀の剣をかざして聖戦を謳う『銀剣の騎士』なんて姿を見れば、敵軍は怯むし、味方の軍の士気はいやましに増すというものだ。一種のシンボルとしての意味もあるというところかな。
ちなみに『銀剣の騎士』の中には、一国の王子であり、『銀剣の騎士』であり、さらに将軍職、聖卿の位まで持ってるなんていうとんでもない人もいる。生まれながらの英雄といったところだね。
……でもまあ、例外もある、かな?」
カ「……」
ユ「『銀剣の騎士』には聖性があると考えられているからこそ、当然、それなりのモラルが求められるというわけ。周囲の期待も当然大きいし、『英雄』であることが期待されてる。当然国に最後まで忠誠を誓うべきだと思われてるし、魔物に協力するなんてもってのほか……ってところ。もしもそういう事例があったら、『名誉の戦死』扱いで闇に葬り去られるのがせいぜいだろうね」
カ「……俺ですね。俺は公式にはもう死んだことになってますし」
ユ「ひどい醜聞だからね」
カ「……」
ユ「とはいえ、実際のところ、こういう世間からの扱いってのは『銀剣使い』としての本来の能力にはまったく関係ない。むしろ君は、中途半端に祭り上げられて腕を磨きそこなっている『銀剣の騎士』などより、ずっと有能だと思う。……君にとっては何の救いにもならないかもしれないけれど」
カ「いえ、ありがとうございます……」
Q『銀の武器』は資格を持たない人間には扱えないんですか?
カ「これはオマケですね」
ユ「うん。だいたい、銀の武器を使うメリットっていうのは、普通の人間にはほとんど無い」
カ「重い・もろい・高いと三拍子そろってますからね」
ユ「ただ、相手が『魔物』だった場合は話が多少別になる。『銀』は聖性を持った金属だから、普通の武器では傷つけられない魔物にも傷を負わせられる場合があるんだ」
カ「そういう場合は、銀の武器を用いる……」
ユ「白兵武器で一般的なのは銀のメッキを施した武器。でも威力はあんまり無い。本当は遠距離から弓や石弓の射撃するほうが効率的なんじゃないかな。対魔物用に限ってそういった装備を固めておくというのは、どこの国でも常識だ」
カ「でも、やっぱり高いんですよね」
ユ「正直、すごく財政を逼迫するね。最近は魔物が多いから銀の相場も高騰してるし。しかも対人間用の武器としては、非効率的なことこの上ない。だからこういう装備をそろえているのは、正規軍よりも、魔物と遭遇することが多い地方領主の私兵が多いね」
カ「……とりあえず一通り『銀剣』について解説しましたけれど、これでいいんですか?」
ユ「うん。メモ書きにはなったんじゃないかな」
カ「でも、上で何回も出てきましたけれども、女性の『銀剣の騎士』って本当にいるんですか?」
ユ「さあ。まだ設定されて無いらしいけれど、ネタとしてはオイシイよね。ジャンヌ・ダルクみたいな聖戦士というイメージだから。無敵の聖少女…… というのはなかなかカッコいいかもしれないね、カスパール?(にっこり)」
カ「(ユーリウス様の言ってることは、たまに分からないなあ……)」
続くかどうかは未定。